『認知心理学研究』第21巻 第2号

『認知心理学研究』 第21巻 第2号(2024年2月)

目次

  • 原著/思考発話法における発話量の個人差とワーキングメモリ容量の関係(長谷川 凌・川島朋也・篠原一光)

  • 原著/選択のオーバーロード現象に待機列による焦燥感が及ぼす効果(松田 憲・畔津憲司・齋藤朗宏・有賀敦紀)

  • 原著/頷きと首振りが選択判断に及ぼす誘導効果(大杉尚之・河原純一郎)

  • 展望/社会的ワーキングメモリ研究:これまでの10年間とこれからの展望(石黒 翔・齊藤 智)

  • 資料/物語理解時の共感的反応における視空間的処理と心的イメージの関連性(細川亜佐子・北神慎司)

  • 学会参加報告/2022年度日本認知心理学会と韓国認知生物心理学会の交流:韓国大会への若手研究者派遣事業・報告(細川亜佐子・太田直斗)

  • 優秀発表賞/第21回日本認知心理学会優秀発表賞の選考結果のお知らせ(熊田孝恒)

  • 会報
    日本認知心理学会2023年度第2回理事会報告
    第22回大会のお知らせ
    受領図書
    お知らせ
    日本認知心理学会 会則
    日本認知心理学会選挙細則
    「認知心理学研究」諸規程

Abstract

原著/思考発話法における発話量の個人差とワーキングメモリ容量の関係

長谷川 凌(大阪大学大学院人間科学研究科)
川島朋也(大阪大学大学院人間科学研究科)
篠原一光(大阪大学大学院人間科学研究科)

 思考発話法とは,実験参加者に課題を行うと同時に課題遂行中の考えをすべて声に出すことを求めることである.本研究は,思考発話量の個人差とワーキングメモリ容量の関係および思考発話が課題成績に与える影響を調査した.実験では,参加者は提示された複数の漢字に共通する漢字一文字を考える遠隔連想テストを,心に浮かんだことを声に出して言いながら行った.また言語ワーキングメモリスパン課題を行い,参加者をワーキングメモリ容量高群と低群に分けた.その結果,ワーキングメモリ容量高群は課題の難易度が高くなると発話量が減少するのに対し,ワーキングメモリ容量低群は発話量が増加したことから,ワーキングメモリ容量によって課題難易度が変化した際にどのように発話するのかが異なる可能性が示唆された.また,発話によって解答時間が遅くなることが示され,発話が課題遂行を妨害する可能性があることが示唆された.
キーワード:思考発話,ワーキングメモリ容量,発話量

原著/選択のオーバーロード現象に待機列による焦燥感が及ぼす効果

松田 憲(北九州市立大学大学院マネジメント研究科)
畔津憲司(北九州市立大学経済学部)
齋藤朗宏(北九州市立大学経済学部)
有賀敦紀(中央大学文学部)

 選択のオーバーロード現象とは,過剰な商品選択肢は消費者にかえって負担になり,購買意欲を抑制してしまう現象である.Haynes (2009)は,タイムプレッシャーを明示的に与えた場合にオーバーロード現象が生起することを示したものの,その後の追試では一貫した結果が得られていない.本研究は,選択を待つ他者の存在によって焦燥感を非明示的に与えることで選択のオーバーロード現象が生起するかを検討した.56名の参加者は,10名の待機列が視界に入る状態で4枚ないし12枚の画像の中から欲しい画像の順位付けを行い,その後に全順位付けに対する満足度と後悔度の評定を行った.残りの36名の参加者は,待機列のいない状態で同様の手続きで行った.その結果,選択時に待機列があることで選択のオーバーロード現象が生起した.以上の結果は,待機列の存在によって生じた焦燥感が認知的制御を妨害して選択行動を阻害したことを示唆するものと考える.
キーワード:選択肢過多,焦燥感,満足度,後悔度

原著/頷きと首振りが選択判断に及ぼす誘導効果

大杉尚之(山形大学)
河原純一郎(北海道大学)

 頷きや首振り動作は,相手に同意や否定の意思を伝えるための重要なサインである.本研究の目的は,コンピューターグラフィックスで作成したモデルの頷きと首振り動作による誘導が二者択一の選択判断に及ぼす影響を明らかにすることであった.動作主の左右に配置された2つの正方形のいずれかに隠された硬貨の位置を答えるというゲーム課題を行なった.左右どちらか一方の正方形を1回クリックすると,それに応じて中央のモデルが頷きまたは首振り動作し,その後に,1回目と同じ正方形または逆側の正方形をクリックするとその位置または逆の位置に硬貨が呈示されるというものであった.実験の結果,頷き動作,首振り動作に選択判断が誘導されることが明らかとなった.また,この誘導効果は動作主属性(若い女性,中年男性,ロボット)によらず生じることが示された.頷きや首振り動作は,自分自身と観察者の間の対象への評価,判断にも影響を及ぼすと考えられる.
キーワード:頷き,首振り,社会的意思決定,顔の印象

展望/社会的ワーキングメモリ研究:これまでの10年間とこれからの展望

石黒 翔・齊藤 智(京都大学)

 ワーキングメモリは認知的活動の遂行を支える.私たちの生活における重要な認知的活動に社会的活動があり,社会的活動で用いられるワーキングメモリとして社会的ワーキングメモリが近年注目を集めている.本論文はこれまでの社会的ワーキングメモリ研究をレビューした.先行研究の知見は,社会的ワーキングメモリと(一般的な)認知的ワーキングメモリの神経科学的・行動的観点からの差異を示唆し,社会的ワーキングメモリという構成概念の重要性を示す.一方で,先行研究には多様な知見を統合的に説明する視点が欠けていることも明らかになった.また,(a)課題間の相関,(b)社会認知との関係に関する理論,(c)感情的ワーキングメモリとの同異点,(d)社会的ワーキングメモリが保持する情報の性質に関して十分検討されていないことも明らかになった.本論文は,これからの研究の方向性として,上記4つの問題に取り組むことを推奨する.これらの問題に取り組むことを通じて,社会的ワーキングメモリ概念が精緻化され,多様な知見を統合する視座を与えることが期待される.
キーワード:社会的ワーキングメモリ,ワーキングメモリ,社会認知,バイオロジカルモーション,デフォルトモードネットワーク

資料/物語理解時の共感的反応における視空間的処理と心的イメージの関連性

細川亜佐子(名古屋大学大学院情報学研究科,日本学術振興会)
北神慎司(名古屋大学大学院情報学研究科)

 物語を読むと,読者の心内において共感的な感情が生じることがある.本研究の目的は,このような物語理解時の共感的反応の喚起プロセスにおいて,視空間的な処理の活性化が生じているのかを検討することであった.さらに,このような視空間的な処理とは,心的イメージと同様の知覚的な性質を有するのかどうかも検討することとした.具体的には,物語読解と同時に視空間記憶課題を課す二重課題を実施し,視空間記憶課題の負荷が物語読解の共感的反応を妨害するかどうかを検証した.その結果,二重課題の視空間記憶課題の課題負荷によって,物語読解課題の共感的反応得点は低下した.ただし,心的イメージ能力との関連性は示唆されなかった.したがって,本研究では,物語理解時の共感的反応に視空間的処理が関与する可能性が示唆された.
キーワード:物語理解,共感,視空間的処理,心的イメージ

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