『認知心理学研究』第19巻 第2号

『認知心理学研究』 第19巻 第2号(2022年2月)

目次

  • 原著/他者観察が変化検出課題成績と不安状態に及ぼす効果(金谷英俊・永井聖剛)

  • 展望/自伝的記憶の構造と測定課題(松本 昇)

  • 展望/両眼視:輻輳眼球運動,対応問題,網膜像差の関係(光藤宏行)

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Abstract

原著/他者観察が変化検出課題成績と不安状態に及ぼす効果

金谷英俊(立命館大学総合心理学部,愛知淑徳大学人間情報学部)
永井聖剛(立命館大学総合心理学部)

他者による課題遂行の観察が,実験参加者の変化検出課題成績と不安状態に及ぼす効果について検討した.交互に呈示される画像間で変化している部分を見つける変化検出課題を参加者に課し,検出までにかかった時間を測定した.実験1では参加者は,他者1名が参加者の斜め後ろに立ち,その課題遂行を観察する(他者観察あり条件),もしくは参加者のみ(他者観察なし条件)のいずれかの状態で課題を遂行した.その結果,他者に観察されていると観察なしの場合よりも,変化検出時間が有意に長くなった.続いて実験2で,人間の他者の代わりにビデオカメラを通して課題遂行の様子を観察した場合にも,カメラ観察なしの場合と比べて変化検出時間が長くなり,STAI状態不安尺度の得点が高くなった.以上の結果は,他者による観察によって参加者の不安が増大することにより,課題遂行時に視覚的注意が機能しにくくなる可能性を示唆するものである.
キーワード:観察者効果,変化検出課題,注意,不安

展望/自伝的記憶の構造と測定課題

松本 昇(信州大学)

自伝的記憶に関する研究は数多く行われてきており,自伝的エピソード記憶と自伝的意味記憶といったさまざまな区分とそれらの測定課題が提唱されている.その背景には,神経心理学,認知神経科学,認知心理学,臨床心理学の各領域において必要とされた課題が開発され,研究が進められてきた過去がある.しかしながら,これらの研究領域は,相互参照されることの少ないままに進められているのが現状である.本論文は,これまでに提唱された自伝的記憶に関する概念課題の対応を測定課題に基づいて整理することを目的とした.自伝的記憶をどのように分類するのか,そのためにどのような測定課題があるのか,自伝的記憶はどのように検索されるのかといったテーマについて,これまでの知見をまとめた.さらに,知見の統合と新たな研究領域の開拓へ向けた,将来の方向性を提言した.
キーワード:自伝的記憶の詳細,自伝的記憶の特定性,エピソード的豊富さ,階層構造,検索過程

展望/両眼視:輻輳眼球運動,対応問題,網膜像差の関係

光藤宏行(九州大学大学院人間環境学研究院)

本論文では,輻輳眼球運動と両眼立体視を調べた近年の心理学的・神経科学的研究を概観する.輻輳眼球運動とは2つの眼球の異なる向きの回転である.両眼立体視,すなわち両眼性の奥行き知覚の大部分は網膜像差の皮質情報処理により生じる.近年の研究により,(a)像差によって誘導される水平方向の輻輳・垂直方向の輻輳・回旋方向の輻輳は,視覚刺激の提示に応じて比較的素早く生じ,(b)両眼立体視には複数の脳領域が関与していることが示されている.これらの知見に基づいて,視覚系がどのように水平像差・垂直像差・回旋像差を処理し,両眼対応問題をどのように解決しているかについての仮説を提案する.
キーワード:立体視,開散,眼球運動,両眼視差,垂直視差

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