『認知心理学研究』第18巻 第1号

『認知心理学研究』 第18巻 第1号(2020年8月)

目次

  • 原著/学習教材における処理流暢性が学習者の学習プロセスに及ぼす影響(長谷部育恵・楠見 孝)

  • 原著/視覚的オブジェクトの「機能」による認識(太田直斗・相澤裕紀・厳島行雄)

  • 原著/日本人中高生の男女が想起する重要な自伝的記憶の特徴(川﨑采香・上原 泉)

  • 会報
    日本認知心理学会第18回総会について
    受領図書
    日本認知心理学会 会則
    日本認知心理学会選挙細則
    「認知心理学研究」諸規程

Abstract

原著/学習教材における処理流暢性が学習者の学習プロセスに及ぼす影響

長谷部育恵・楠 見   孝(京都大学大学院教育学研究科)

  本研究では,学習教材における処理流暢性が学習者の認知・行動に及ぼす影響を検討した.大学生 (N= 68)が実験に参加し,流暢フォントを用いた学習課題と非流暢フォントを用いた学習教材に対して同 時進行で取り組んだ.本研究では,流暢性が学習時のモニタリング(JOL)とコントロール(学習時間の割 り当て)に及ぼす影響を見るため,参加者に対しては学習後に実施する両課題に関するテストで,それぞれ 同程度の学習成績を残せるように学習を進めるよう求めた.その結果,参加者内で比較すると,流暢フォン ト課題に取り組んだときと比較して非流暢フォント課題に取り組んだときにはJOLの評定値は低く,かつ自 由学習時間中により多くの時間が割り当てられていた.ただし,その際学習時間と学習成績との間に相関関 係はみられなかった.補足的な分析からは,学習方略や課題に対する内発的動機づけや課題に対する努力な どによって,学習時のコントロールやパフォーマンスに個人差が生じる可能性が示唆された.
キーワード: 流暢性,学習教材,モニタリング,コントロール,パフォーマンス

原著/視覚的オブジェクトの「機能」による認識

太田直斗(日本大学大学院文学研究科)
相澤裕紀(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所)
厳島行雄(日本大学文理学部)

  Rosch et al.(1976)をはじめとするオブジェクト認知に関する先行研究では,上位カテゴリー(文具), 基本カテゴリー(ペン),下位カテゴリー(赤ペン)というカテゴリーの階層構造において,基本カテゴリー が最初に認識されることが主張されてきた.しかし , そのような先行研究では,「機能」という上位概念が どのように認識されるのかという問題は検討されてこなかった.本研究では,機能カテゴリー(切る)が, オブジェクトの認識システムにおいてどのような役割を担うのかについて,概念へのアクセスの速さに着目 して検討を行った.実験1, 2では機能カテゴリーによるオブジェクトの認識が上位カテゴリーよりも速く行 われることを明らかにした.RSVPによる検出課題を行った実験3では,機能カテゴリーと基本カテゴリー の検出成績(d’)の差は有意ではなかったが,機能カテゴリーは上位カテゴリーよりも検出成績が優れる ことが明らかとなった.これらの結果は,機能カテゴリーはオブジェクトの認識の初期段階で認識可能であ り,人工オブジェクトを認識するうえで重要な役割を担う概念であるということを示唆している.
キーワード: オブジェクト認知,機能,自然シーン

原著/日本人中高生の男女が想起する重要な自伝的記憶の特徴

川﨑采香(お茶の水女子大学大学院)
上原 泉(お茶の水女子大学)

 自伝的記憶とは自分史の一部をなすような,過去の個人的な出来事の記憶であり,そのあり方や語られ方 に文化差や性差,発達差がみられる可能性が指摘されているが,日本人の思春期を対象とした研究はほぼ行 われておらず,その自伝的記憶の内容や発達的特徴は不明である.本研究では,日本人中高生に重要な自伝 的な出来事を想起するようにもとめ,その内容と経験時の年齢,伴う感情などを調べた.まず,中高生男女 が想起した内容をカテゴリーに分類した結果,カテゴリーは概ね共通し,学校に関する出来事(入学,卒 業,部活動など)が多く含まれた.一部の出来事カテゴリーにおいて,中高差や男女差がみられた.また, 中学生は12歳,高校生は15歳に経験した出来事をほかの年齢よりも多く想起することが示された.感情別 に見ると,これらの時期に想起量の山がみられたのはポジティブ感情もしくは両方(ポジティブとネガティ ブが混ざっている)感情を伴う出来事のみであった.日本の中高生の自伝的記憶の特徴について,発達差や 性差も含めて考察した.
キーワード:自伝的記憶,思春期,発達,性差,内容分析

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