『認知心理学研究』第14巻 第2号

『認知心理学研究』 第14巻 第2号(平成29年2月)

目次

  • 原著/想起内容とその感情的側面からみた高齢者の自伝的記憶(屋沢 萌・上原 泉・御領 謙)

  • 原著/成功経験と失敗経験に対する自伝的推論とアイデンティティ発達,適応との関連(佐藤浩一)

  • 資料/視覚刺激呈示ハードウエアとしてのDLPプロジェクタ(新国佳祐・立花 良・岩崎祥一・邑本俊亮)

  • 優秀発表賞/第14回日本認知心理学会優秀発表賞の選考結果のお知らせ(箱田裕司)

  • 会報
    日本認知心理学会2016年度第2回理事会報告
    第15回大会ご案内
    公開シンポジウムの報告
    受領図書
    お知らせ
    日本認知心理学会 会則
    日本認知心理学会選挙細則
    「認知心理学研究」諸規程

Abstract

原著/想起内容とその感情的側面からみた高齢者の自伝的記憶

屋沢 萌(お茶の水女子大学大学院)
上原 泉(お茶の水女子大学)
御領 謙(千葉大学)

 自伝的記憶は自己に関する個人的な経験の記憶であり(Conway & Pleydell-Pearce, 2000),特に,高齢者ではレミニセンス・バンプの存在が知られているものの,自伝的記憶の出来事に対する感情とバンプの関連や出来事の内容はほとんど検討されてこなかった.本研究では,自由再生法により,高齢者に自伝的記憶の想起を求め,個別感情の時間的な変化と,出来事の内容を詳細に調べた.その結果,誇らしいという感情,ありがたいという感情について20代の出来事にバンプが生じることを示し,懐古感情とバンプとの関連について新たな示唆を得た.また,時間を経ると,ポジティブな出来事に対するポジティブ感情は増すが,ネガティブな出来事へのネガティブ感情は薄れることもわかった.出来事内容については,仕事・家族・遊び・恋愛・死・怪我/病気・教育/学校といった出来事が想起されやすく,恋愛と家族に関する内容は20代に多いことを示した.高齢者の自伝的記憶における出来事の感情および内容をバンプとの関連から考察した.
キーワード:自伝的記憶,高齢者,感情,内容カテゴリ,レミニセンス・バンプ

1)本研究は平成24年度学術振興会科研費基盤研究(C)課題番号23530964 (代表者 御領 謙)の助成を受けている.

 

原著/成功経験と失敗経験に対する自伝的推論とアイデンティティ発達,適応との関連

佐藤浩一(群馬大学大学院教育学研究科)

 自伝的推論は過去経験と自己を結びつける内省的志向である.本研究では自伝的推論尺度が構成された.467名の協力者(19~57歳)が,成功経験と失敗経験を一つずつ想起し,それぞれについて自伝的推論尺度,記憶の鮮明度と感情価を評定した.また自伝的記憶の機能の尺度(日本語版TALE尺度:落合・小口,2013)に回答した.さらに250名の参加者はアイデンティティ,自尊感情尺度,人生満足度に関する尺度に回答した.因子分析の結果,自伝的推論尺度は5因子(自己,転機,重要,教訓,リハーサル)から構成されており,信頼性と妥当性が示された.成功経験は失敗経験に比べると,強い自伝的推論を引き起こしていた.成功経験に対する自伝的推論と,アイデンティティ発達,自尊感情,人生満足度との関連が見いだされた.
キーワード:自伝的推論,成功経験・失敗経験,アイデンティティ,適応

1)本研究の一部は日本心理学会第79回大会と日本心理学会第80回大会において発表された.
2)本研究はJSPS科研費25380870の助成を受けたものです.
3)本研究のデータ解析にあたり音山若穂教授(群馬大学教育学研究科)から丁寧なご教授をいただきました.記して感謝申し上げます.

資料/視覚刺激呈示ハードウエアとしてのDLPプロジェクタ

新国佳祐(東北大学大学院情報科学研究科)
立花 良(東北大学大学院文学研究科,日本学術振興会)
岩崎祥一(東北大学大学院情報科学研究科)
邑本俊亮(東北大学災害科学国際研究所,東北大学大学院情報科学研究科)

 本論では,認知・知覚実験における視覚刺激呈示ハードウエアとして,LED光源のDLP (digital light processing)プロジェクタで,比較的安価な一般向けのものを取り上げ,その投影特性について実際に計測・可視化したデータを刺激呈示の厳密な時間的制御が実現できるかという視点から紹介する.視覚刺激の呈示時間制御が重要となるバックワードマスキングのような実験操作には投影映像の輝度変化速度が重要となるが,計測の結果,DLPプロジェクタはCRTディスプレイなどのハードウエアよりも非常に高速な輝度制御を実現していた.一方でDLPプロジェクタには比較的大きな表示遅延(映像表示命令を受けてから実際に表示を始めるまでのタイムラグ)が確認されたが,その遅延の大きさは常に一定であり,実験プログラム上またはデータ解析時に遅延分を補正することで対処可能であることが示された.DLPプロジェクタは入手の容易性や将来性,ならびにfMRI, MEGなどの脳機能計測実験への適応可能性に鑑みても,その視覚刺激呈示ハードウエアとしての有用性は大きいといえる.
キーワード:DLPプロジェクタ,LED光源,視覚刺激呈示

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