『認知心理学研究』第13巻 第1号

学会誌『認知心理学研究』 第13巻 第1号(平成27年8月)

第13巻 第1号(平成27年8月)

目次

  • 原著/再認の正確さと確信度評定の関連性の主観的および名義的新旧反応率による分析(日隈美代子・漁田武雄)

  • 資料1/成人期における日常記憶の自己評価に関する発達的変化:日常記憶質問紙(EMQ)による検討(清水寛之・金城光)

  • 資料2/系列学習によって形成された表象に記憶の固定化がもたらす変化(渡辺 晃・分部利紘・綿村英一郎・高野陽太郎)

  • 特別寄稿/“認知心理学の名づけ親”ナイサー教授を追悼する(高野陽太郎)

  • 学会参加報告/日本認知心理学会と韓国認知生物心理学会の交流:韓国済州大会への若手研究者派遣事業の報告(齊藤智・李光五)

  • 会報/第5期日本認知心理学会
    日本認知心理学会第13回総会報告
    2014年度決算
    2015年度予算・新規事業計画案
    第14回大会のお知らせ
    2014年度研究部会からの活動・会計報告
    受領図書
    お知らせ
    日本認知心理学会 会則
    日本認知心理学会選挙細則
    「認知心理学研究」諸規程

 

第13巻 第1号 アブストラクト

原著/再認の正確さと確信度評定の関連性の主観的および名義的新旧反応率による分析1)

日隈美代子(静岡大学創造科学技術大学院)
漁田武雄(静岡大学情報学部)

三つの実験によって,主観的新旧反応率によるキャリブレーション曲線と,名義的新旧反応率によるキャリブレーション曲線と比較することにより,意味情報と感覚情報が再認の正確さと確信度評定の関係に与える影響を調べた.これらの実験において,学生(n=273)は単語の意図学習を行い,その後,再認テストと自身の再認判断に対する確信度を評定した.意味情報のキャリブレーション曲線に対する影響を調べるため,新旧の項目の紛らわしさを変化させた.実験1 (視覚)と2 (聴覚)は,学習と再認の提示を,同一の感覚モダリティで行った.実験3は,聴覚提示による学習と,視覚提示による再認テストを行った.名義的反応率の分析は,先行研究の結果と同様に,意味的な紛らわしさが影響し,新項目は傾きが小さい,もしくは右下がりのキャリブレーション曲線を示した.対照的に,意味情報か感覚情報のどちらかが再認判断に使用可能であれば,主観的反応率の分析では正のキャリブレーション曲線になった.本研究の結果は,再認判断での主観的反応率での分析の重要性を示している.
キーワード:再認の正確さ,確信度評定,キャリブレーション曲線,再認反応の主観的分析

 

資料1/成人期における日常記憶の自己評価に関する発達的変化:日常記憶質問紙(EMQ)による検討1), 2)

清水寛之(神戸学院大学人文学部)
金城 光(明治学院大学心理学部)

本研究の目的は,日常記憶質問紙(the Everyday Memory Questionnaire, EMQ)を用いて,成人期における日常記憶の自己評価に関する発達的変化を明らかにすることである.299名の一般成人(19~25歳の若齢者99名,38~55歳の中年者97名,63~75歳の高齢者103名)が本調査に参加し,日常生活における記憶活動の忘却や記憶失敗に関する28項目についての発生頻度を“最近6カ月で1回もない”から“日に1回以上”までの9件法で評定した.先行研究(清水・高橋・齊藤,2006, 2007など)によるEMQの因子構造に基づいて全項目を五つの下位項目群に分類したうえで項目群ごとに各年齢群の評定値を比較したところ,その発達的変化は(a)若齢者=中年者=高齢者,(b)若齢者>中年者>高齢者,(c)若齢者=中年者>高齢者,(d)若齢者>中年者=高齢者,(e)若齢者>高齢者,の五つのパターンに分かれた.日常記憶の自己評価は成人期に自己の記憶能力に対して悲観的な見方から楽観的な見方へと段階的に移行していくことが示唆された.
キーワード:日常記憶,成人発達,日常記憶質問紙,メタ記憶,加齢

 

資料2/系列学習によって形成された表象に記憶の固定化がもたらす変化

渡辺 晃(東京大学大学院人文社会系研究科)
分部利紘1)(東京大学大学院教育学研究科/日本学術振興会)
綿村英一郎(東京大学大学院人文社会系研究科)
高野陽太郎(東京大学大学院人文社会系研究科)

系列学習に関する研究により,学習後に睡眠を経ることで,先行チャンク内項目の検索と並行した後続チャンク内項目の検索が促進されるという,“記憶の固定化”が示されてきた.しかし,学習した系列の記憶表象に睡眠がいかなる変化をもたらすのかについては未解明であった.われわれは,学習後の睡眠がチャンク間の結合を強化するのか,それとも,個々の項目間の結合を強化するのか検証した.参加者は二つのチャンクにより構成された系列を学習した後,その系列の中間部分,すなわち先行チャンクの後半から後続チャンクの前半にかけての部分系列を,それ単体もしくは系列全体の一部として実行した.結果,同部分系列に対する運動速度が睡眠により向上したのは,それを系列全体のなかに埋め込む形で実行した場合にのみ限られた.これは,睡眠が強化するのは項目同士ではなくチャンク同士の結合であること,およびチャンクの構造は記憶の固定化後も保持されていることを示唆する.
キーワード:記憶の固定化,系列学習,睡眠

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