優秀発表賞

 

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第14回日本認知心理学会優秀発表賞の選考結果のお知らせ

 日本認知心理学会優秀発表賞規程に基づき,選考委員会において審議を重ねた結果,推薦発表総数65件の中から,以下の4件の発表に,規程に定められた評価部門の優秀発表賞を授与することに決定いたしました.受賞者には第15回大会の総会にて,優秀発表賞を授与いたします.会員の皆様におかれましては,今後とも日本認知心理学会におきまして数多くの優れた発表をなされることをお願いいたします.

2017年1月17日
日本認知心理学会優秀発表賞選考委員会委員長
箱田 裕司 

新規性評価部門
受賞者(所属):
有賀 敦紀(広島大学大学院総合科学研究科)
発 表 題 目 :
「所持品に拡張されたパーソナルスペース」
発 表 要 旨 :
人間には他者にこれ以上近づかれると何となく落ち着かない距離がある(personal space: PS).このPSは個人の身体を取り巻く目で見ることのできない空間領域であり,その特性に関して様々な社会心理学的研究が行われてきた.しかし,PSが身体から離れた個人の所持品を取り巻く空間にまで拡張するのかを調べた研究はこれまでにない.本研究では,二人の実験参加者(うち一人はサクラ)が残した所持品間の距離を測定して,PSが所持品を取り巻く空間に拡張するのかを調べた.その結果,実験参加者とサクラの対人関係が所持品間の距離に影響を与えることがわかった.本研究の結果は,所有者のPSが身体から離れた所持品を取り巻く空間において拡張して観察される,という拡張的パーソナルスペースの存在を示唆するものであった.
選 考 理 由 :
本研究は,古典的に知られている「パーソナルスペース」に,「拡張された自己」の概念を組み合わせることによって,「拡張的パーソナルスペース」という概念を提案している.実験では,実験参加者のサクラに対する好意度を実験的に操作し,それがバッグを置く位置関係に反映されるかを検討し,好意度が低いほどサクラのバッグから離れた位置に参加者はバッグを置くことを報告している.この結果から,パーソナルスペースが自分自身を中心としたものであるという従来の知見に加えて,自分の所有物を中心としたものでもありうるという知見が新たに示されている.古典的な研究に新たに光を当て,今後の研究への展開も期待できるため,新規性評価部門における優秀賞に値するものと判断した.

 

技術性評価部門
受賞者(所属):
木原 健,武田裕司(鹿児島大学大学院理工学研究科,産業技術総合研究所 情報・人間工学領域)
発 表 題 目 :
「偽り表情の認識における空間周波数情報の関与」
発 表 要 旨 :
普段のコミュニケーションでは,怒りを感じていても作り笑いを浮かべるなど,表情を偽ることがある.一方,偽り表情を本当の表情と区別することもできる.ただし,どのような視覚情報を利用してこれらを区別しているかは不明であった.表情認識には低・高空間周波数情報が利用されているため,それが偽り表情の区別にも関与している可能性がある.そこで,低・高空間周波数情報で構成された顔画像の表情強度を変化させて,4種類の表情(本当の笑顔,本当の怒り顔,偽りの笑顔,偽りの怒り顔)を作成する実験を行った.その結果,偽りの笑顔は,低空間周波数情報が中立表情,高空間周波数情報が弱い笑顔で構成され,偽りの怒り顔は,低・高空間周波数が弱い怒り顔で構成されることが示された.したがって,空間周波数情報を利用することで,偽りの笑顔は偽りの怒り顔よりも容易に認識できることが示唆された.これは,危険情報に敏感に反応するという適応的な認知処理(Mathews, Mackintosh, & Fulcher, 1997)を反映していると考えられる.
選 考 理 由 :
日常のコミュニケーション場面では,表出された表情が内面の感情と一致しているとは限らない.内面では怒りの感情があるのにもかかわらず,作り笑いをするような状況である.本発表は,このような本来の感情と異なる表情,すなわち偽りの表情を認識する上で表情刺激の空間周波数情報がどのように関わっているのかを明らかにした興味深い研究である.実験では3D顔画像作成ソフトウェアを駆使して高空間周波数画像と低空間周波数画像を重ねた刺激を作成し,その刺激に対して実験参加者自身が空間周波数別に表情強度を変化させ,本来の表情や偽りの表情を作成するといった非常に洗練かつ工夫された課題を利用している.このような実験手法は,技術的に高い水準にあるもので,今後の表情認知研究にも強い影響を与えるものだといえる.以上の点から本発表は技術性部門での受賞に値するものと判断した.
 
受賞者(所属):
眞嶋 良全(北星学園大学社会福祉学部)
発 表 題 目 :
「オンライン認知実験の可能性を探る」
発 表 要 旨 :
近年,クラウドソーシングサービスを利用したオンライン調査・実験が数多く行われ,オンライン上で認知実験を実施する試みも始まっている.しかしながら,最も良く使われるサービスであるAmazon Mechanical Turk (AMT) では,参加者の大半が米国在住の白人という偏りがある.本研究は,AMTとは人口統計的特徴が異なる日本国内のクラウドソーシングサービスから参加者を募り,先行研究と同様にオンライン認知実験の有効性を検証した.ストループ干渉に代表される,ミリ秒単位の刺激呈示・反応測定を含む5つのオンライン実験の結果は,AMTサンプルを用いた検証実験や伝統的な実験室実験を再現するものであり,オンライン認知実験が有効な研究手法であることを示唆している.一方で,大学生はオンラインサンプルよりも反応が速いが,誤答も多いという傾向が一貫して見られた.この相違を生じた要因については,さらなる検討を要すると思われる.
選 考 理 由 :
近年の情報技術の発展によって,インターネットを活用したオンラインでの認知実験の実施が期待されている.本研究は,オンライン上で認知実験システムを構築し,伝統的な実験室実験とオンライン実験の結果が同等となるか,オンライン実験の妥当性を検討した研究である.結果においては,実験室実験と同様の結果が再現され妥当性があることを示すとともに,その実験環境について紹介を行った.本研究におけるオンラインの実験環境を構築した高度なプログラミング技術の報告,その実験環境の妥当性の確認の報告は,今後の認知実験の実験環境の向上には重要な貢献であり,技術性評価部門の優秀賞に十分に値するものと判断する.

 

社会的貢献度評価部門
受賞者(所属):
今回は該当者なし.

 

発表力評価部門
受賞者(所属):
入戸野宏(大阪大学大学院人間科学研究科)
発 表 題 目 :
「個人的な愛着のあるモノを見たときの認知処理」
発 表 要 旨 :
客観的には価値がないと分かっていても,長期の経験によって特別な思い入れ(愛着)を感じるモノがある.本研究では,個人的な愛着に関連した認知処理を検討するために,2種類のマグカップの写真に対する脳電位反応を測定した.実験参加者が日常生活で使っているマグカップ(愛着刺激),または,実験室で謝礼として受け取ったマグカップ(単純所有刺激)を,その他のマグカップの写真5枚に混ぜてランダムな順序で提示した.愛着あるマグカップの写真には,刺激提示から約300ミリ秒以降に生じる事象関連電位のP3と後期陽性電位の振幅が大きかった.一方,直前に受け取ったマグカップの写真にはそのような差は認められなかった.先行研究において,愛する人の顔に対して高振幅のP3と後期陽性電位が惹起されることが示されている.人であってもモノであっても,個人的な愛着のある対象には注意をひきつけられ,持続的な処理が行われるといえる.
選 考 理 由 :
本発表は,自分が所有しているモノに注意を向けより高く評価する単純所有効果について,同じ所有感でも,所有が開始されたばかりのモノと,長期間所有し愛着を感じているモノの違いに焦点をあて,事象関連電位を用いて実際に認知処理に明確な違いがあらわれることを実証した優れた研究である.発表の内容やスタイルも, わかりやすい例示をしめしたり,明確で丁寧な解説を工夫して行うなど,発表力評価部門での受賞にふさわしいものであった.

 

国際性評価部門
受賞者(所属):
今回は該当者なし.

 

総合性評価部門
受賞者(所属):
今回は該当者なし.

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