優秀発表賞

 

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第18回日本認知心理学会優秀発表賞の選考結果のお知らせ

 日本認知心理学会優秀発表賞規程に基づき,選考委員会において慎重な審議を重ねた結果,発表総数124件の中から,以下の5件の発表に優秀発表賞を授与することに決定しました.受賞者には第19回大会にて授与を行います.

2021年6月12日

※下記受賞者の所属表記はすべて,発表当時のものとなります.現在の所属と異なる場合もあります.ご了承いただけますと幸いです.
※お名前表記に*がある方は2021年6月14日時点での非会員です.次回大会時に予定されている授与式までに入会された場合には発表賞授与の対象となります.

【新規性評価部門】
受賞者(所属):
蔵富恵1,北神慎司2,*村山航3(1.愛知淑徳大学,2.名古屋大学,3.レディング大学)
発表題目:
「不明瞭な正答基準が内発的動機づけの過小評価に及ぼす影響」
発表要旨:
これまでの研究では,動機づけに関するメタ認知的な気づきが不正確であることが示されている.例えば,英文字消去課題,単語並び替え課題,フランカー課題などは,内発的動機づけが過小評価される.しかし,これらの課題は正答基準が明確であることから,課題中のポジティブなフィードバックが動機づけを高め,結果的に過小評価を導いているとも考えられる.そこで,本研究では,正答基準の曖昧な課題が,内発的動機づけに及ぼす影響を検討した.具体的には,無意味図形に対して,正答基準が曖昧な分類課題,あるいは,正答のない選好課題を用いて,それらの課題における内発的動機づけを測定した.その結果,分類課題では課題前後で内発的動機づけは変わらず,選好課題では内発的動機づけが過大評価された.このように,課題の正答基準が,メタ動機づけの不正確さを導いている可能性が示唆された.
選考理由:
本研究では,課題の正答基準の明確さが,内発的動機づけについてのメタ認知の不正確さに影響することを明らかにしている.従来の研究では,内発的動機づけの予測値が実測値よりも低いという過小評価が認められることが報告されてきた.本研究では先行研究で用いられてきた明確な正答基準のある課題ではなく,正答基準が明確でない分類課題と正答のない選好課題を用いている.その結果,分類課題では内発的動機づけの過小評価が見られず,選好課題ではこれまでの報告とは逆に過大評価が観察されることが明らかとなっている.このような成果は,内発的動機づけのメタ認知の不正確さをもたらす要因を明らかにしたというだけではなく,そのメタ認知の不正確さが過大評価という方向でも生起しうること,そして明確な正答基準の有無がもたらす影響の一つを明らかにしたという意義も有している.以上の理由から,本研究は新規性評価部門における優秀賞に値する研究であると判断した.

 

【社会的貢献度評価部門】
受賞者(所属):
楠見孝11(1.京都大学)
発表題目:
「なつかしさ傾向性と加齢がなつかしさの機能に及ぼす影響」
発表要旨:
本研究では,全国の18-79歳の1020(男504,女516)人に対してオンライン調査を実施した.過去をなつかしく思う個人差指標であるなつかしさ傾向性を,Southamptonノスタルジア尺度(Barrett et al., 2010)となつかしさポジティブ-ネガティブ傾向尺度(楠見,2014)で測定し,人生におけるなつかしい出来事を想起させて,なつかしさの機能(Cheung et al., 2013)を測定した.その結果,なつかしさの機能の評定値は,時間的連続性,人生の意味,社会的結びつき,自己の明確性の順に高く,加齢によって上昇した.また,パス解析の結果,ポジティブななつかしさ傾向が高い人は,ポジティブ機能が上昇し,一方,ネガティブななつかしさ傾向が高い人は,なつかしさのポジティブ機能を抑制した.なつかしさを想起することによって,社会的結びつきを強く認知し,自己が明確化されるほど,人生の満足度が高かった.
選考理由:
本研究は,なつかしさに関連した個人差と加齢となつかしさの機能の関係について調査,分析した研究である.その結果として,なつかしさの代表的4機能(社会的結びつき,自己の時間的連続性,人生の意味,自己の明確姓)が,加齢に伴って上昇していたことを報告している.また,なつかしさに関連した個人差が,上述の4機能を介して,人生満足度にも影響していることを明らかにした.これらの結果は,超高齢社会となった日本という文脈において,高齢者の精神的健康を考える上で重要な知見を提供するものと考えられる.そして,本研究結果が,オンライン調査によって幅広い層(年齢,就労状況,婚姻状況,教育歴)から比較的大きなサンプルサイズのデータから得られたものであるという点も評価に値する.

 

【国際性評価部門】
受賞者(所属):
Kobayashi Honami1,Muto Hiroyuki2,3,*Shimizu Hiroshi1,Ogawa Hirokazu1(1.Kwansei Gakuin University,2.Kyoto University,3.Ritsumeikan University)
発表題目:
「Effects of interstimulus spacing on flanker interference investigated by hierarchical diffusion modeling」
発表要旨:
フランカー課題における視覚的注意処理のモデルとして,試行の最初には刺激全体に広く分散していた注意が,試行内の時間経過に伴って標的位置に収斂していく過程を表現した数理モデルが提案されている (White, Ratcliff, & Starns, 2011).本研究はベイズ階層diffusionモデルを用いて先行モデルを拡張し,刺激間距離の増加に伴いフランカー刺激による干渉が低下する現象を表現できるかを検証した.その結果,モデルによる予測は実験で得られた反応時間データのパターンと一致しなかった.そこで新たに試行内の情報集積率を標的に類似した情報が入力される情報全体に占める割合として算出するモデルを作成し,検証した.そして,試行開始時の注意分散の形状を正規分布ではなく収斂度がより高い分布で表現することによって,偏心度の増加に伴う干渉効果の減少をよりよく説明できることがわかった.注意のスポットライトを正規分布よりも細くすそ野が重い形として記述することで,よりデータをうまく説明できることを示した.今後メカニズムを探るための新たな研究を考える端緒となることが期待される.
選考理由:
本研究では,フランカー課題遂行時の情報処理プロセスをdrift diffusion modelで表現した先行研究のモデルに,一般化正規分布を導入することや,パラメータの構造を理論的に修正することで拡張を試みた.それにより,先行研究で提案されたモデルよりも,「標的とフランカー間の距離が拡大するほど干渉効果が減少する」というよく知られた影響を表現できることが判明した.発表者は流暢な英語による口頭発表を行ったのみならず,口頭による英語の質疑応答や,質問投稿サービス(Slido)上で記載された英文の質問に対する英文の回答を,明確に行った.今後,本発表における成果を,学術論文等で国際的に発信していくことも期待させる発表や質疑応答であり,国際性評価部門の受賞として推薦する次第である.

 

【総合性評価部門】
受賞者(所属):
上田祥行1,齋木潤1(1.京都大学)
発表題目:
「視覚探索の個人差を決める要因」
発表要旨:
視覚探索は日常で頻繁に見られる行動の一つであり,注意の働きを調べるのに適した課題として用いられてきた.探索のパフォーマンスには,ターゲットを定義する特徴だけでなく,知識や経験,探索者の個人特性が影響すると考えられる.本研究では,ターゲットと妨害刺激の役割を入れ替えると探索の効率が大きく変化する現象(探索非対称性)が生じる4種類の刺激セットを使って,①ターゲット間での探索パフォーマンスの一貫性,②探索成績の個人差を説明する要因の2つを検討した.その結果,探索非対称性が生じるかどうかは知識や経験に依存する刺激セットであっても,一旦探索非対称性が生じるようになると,その効果の大きさは低次な特徴処理に依存することが示された.また,探索のパフォーマンスは探索者の個人特性(協調および報酬依存)によっても説明された.特に,報酬依存の高低は視覚探索の文化差の方向(Ueda et al., 2018)とも一致しており,この一因となっている可能性も考えられる.
選考理由:
本研究は,参加者に対し,複数の異なる種類の視覚探索課題および個人特性に関する質問紙を実施し,階層線形モデルを用いて,視覚探索の個人差にどのような要因が寄与しているのかを検討している.実験の結果,視覚探索のいくつかの個人差が,探索する刺激特性だけでなく,参加者側の個人特性によって説明できることを明らかしており,視覚探索の個人差に関する重要な知見を提供している.また,標的刺激と妨害刺激を入れ替えたときに生じる探索効率の変化(探索非対称性)を用いてモチベーションを統制する等の工夫も評価できる.以上のことから,本研究は総合性評価部門の受賞にふさわしいと判断した.
受賞者(所属):
中村航洋1,2,*浅野正彦3,渡邊克巳1,*尾野嘉邦4(1.早稲田大学,2.日本学術振興会,3.拓殖大学,4.東北大学)
発表題目:
「逆相関法による政治家の顔ステレオタイプの可視化」
発表要旨:
政治的意思決定や選挙行動は,政治家の掲げる公約や政策の内容だけでなく,有権者の偏見や政治家の容姿といった,政治とは直接的関連の薄い要因にも左右される.本研究では,日本人が政治家の容貌に対して抱くステレオタイプを逆相関法により可視化し,顔印象と表情の観点から分析を行った.実験では,2016年の参議院議員通常選挙候補者の平均顔にランダムノイズを付加した画像を多数生成し,実験参加者に「内閣総理大臣」あるいは「防衛大臣」にふさわしいと感じる顔つきの写真を選択してもらう課題を実施した.逆相関法による分類画像の解析から,内閣総理大臣および防衛大臣のステレオタイプに合致する顔には,有能さや外向性といった印象が表れやすく,内閣総理大臣の顔には喜び表情,防衛大臣の顔には支配性や攻撃性の印象がより強く反映されることが分かった.本研究の結果は,人々が政治家に期待する役割や能力が顔ステレオタイプに反映される可能性を示唆しており,今後はこうした顔ステレオタイプが有権者の実際の選挙行動に及ぼす影響やその影響を取り除く方法についてさらに検討を行いたい.
選考理由:
本研究は,日本の選挙立候補者から生成された平均顔をもとに,ランダムノイズによって調整された300ペアのサンプル画像を用いて,政治家としてのふさわしさを判断させ,結果として大臣に望ましい顔の印象,あるいは内閣総理大臣と防衛大臣にふさわしいと思われる印象特性の違いを見出した.顔刺激を用いた役職へのふさわしさ判断と,ふさわしさを喚起する印象特性の検討は方法としても明快であり,説得力のある発表であった.また得られた知見は日本人の政治家に対しわれわれが考える望ましさの要素を示唆するものであり,われわれ日本人の政治観を指摘するユニークさと興味深さを備えている.
上記の理由から,本大会の発表の中でも多角的な観点から特に優れたものであると判断し,総合性評価部門での発表賞として推薦するものである.

※技術性評価部門,発表力評価部門は該当なし

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