日本認知心理学会優秀論文賞
日本認知心理学会優秀論文賞につき
日本認知心理学会では,2021年度より,認知心理学会優秀論文賞を設けています。2022年度からは,優秀論文賞のもとに特別賞,奨励賞の2種類が設けられています。
機関誌「認知心理学研究」の前年度に完結した巻に掲載された原著論文の中から,優秀論文賞選考委員会が,規程に基づき,認知心理学の発展において特に大きな貢献を果たした論文を選考し,優秀論文特別賞,優秀論文奨励賞として顕彰いたします。
選考経過
2022年度の優秀論文賞選考委員会は,規程により,常務理事である仲 真紀子氏(委員長),理事である外山 紀子(副委員長),厳島 行雄,北神 慎司,清水 寛之,中尾 敬,西崎 友規子,原田 悦子各氏,および理事長である熊田 孝恒氏の9名で構成された。
対象となった論文は,「認知心理学研究」第19巻1号,2号に掲載された4編であった。審査は日本認知心理学会優秀論文賞規程および優秀論文賞選考手続きに則って行い,第一次審査,第二次審査の結果を総合的に判断し,最終的に,以下の2編を優秀論文賞とした。
認知心理学会第20回大会において授賞式が行われた。
2022年度認知心理学会優秀論文特別賞
論文タイトル,著者名
「両眼視:輻輳眼球運動,対応問題,網膜像差の関係」 光藤宏行
授賞理由
本論文は、両眼視における輻輳眼球運動と両眼立体視に関する心理物理的研究及び神経科学的研究の成果を概観し、それらの知見を統合的に説明できる著者自身の両眼対応補正モデルを提案したレビュー論文である。研究知見の紹介にとどまらず、視覚系における水平、垂直、回旋像差の処理に関する検証可能な独自のモデルの提案を行っており、視覚世界における両眼立体視の成立解明のための研究の、一つの方向性を示唆する論文となっている。本論文で提案されたモデルが視覚世界の成立という大きな文脈でもつ意味についても,考察を提示してほしいという願いが起こらなくははないが、本論文において著者のオリジナリティが十分に発揮されているという事実は重要であり、今後の発展的実証研究の可能性に期待できる論文となっている点は、大いに評価できる。以上の理由により、認知心理学会優秀論文賞(特別賞)を授与されるにふさわしい論文であると評価された。
2022年度認知心理学会優秀論文奨励賞
論文タイトル,著者名
「GUIベースのweb実験作成ツール(lab.js)の紹介と実践」 大杉尚之・小林正法
授賞理由
本論文は、コロナ禍で急速に需要が増した遠隔での実験の実施に関し、無料で利用できるオープンソースソフトウェアlab.jsを取り上げ、その基本的な使い方から実践例までを詳細に記述したものである。大学の授業において実践的な実験を構築・実施する方法を具体的に説明している他,研究方法教育におけるツールの位置付けについても著者らの経験に基づいた知見を整理している。本ソフトウェア特有の問題だけでなく,オンライン実験そのものに対する課題提案や解決策についても言及している。実際の研究実践の蓄積がないと書けない内容である点や学会員への有益性の高さを考慮し、奨励賞にふさわしい論文であると評価された。