理事長挨拶

理事長挨拶

認知心理学会は、2003年の創設以来、20回を超える大会を開催してきました。学問としての「認知心理学」の端緒を1960年代と考えると、60年が経過していることになりますが、この間、この学問を取り巻くアカデミックな環境は大きく変わり、その変化の影響を受けながら認知心理学は大きな発展を遂げてきました。特に、脳神経科学や計算機科学の躍進の影響は大きく、その成果も取り入れる形で発展した部分まで含めると、「認知心理学」が扱う心の機能の範囲は、非常に広くなってきています。もはや、簡単な教科書に収めることは困難なレベルに達しています。その結果として、限られた紙面や授業時間に対応するため、学問発展の礎となってきた知識が軽視される傾向が顕著になってきています。また、たくさんの量を詰め込みがちになり、その基礎がいったいどのような意味をもつのか、あるいはそれをどのように展開すべきかに関する深いレベルの議論にまで至らなくなってきています。学会は、こうしたアイディアを共有し、各個人の研究を生き生きと展開させるヒントを得られる場である必要があります。これを具現化するためのシステムとして、当学会には、学会誌での刊行、公開シンポジウムやベーシック&フロンティアセミナーの開催に加え、さまざまな専門的視点による研究部会が構築されています。次世代を担う若手研究者の支援や、国際連携を深める努力も継続しています。

近年は、SNS利用の拡大やAIの台頭によって、認知心理学が学問として解くべき問題も変わってきています。こうした時代の潮流に適切に対応する柔軟性が求められる今こそ、認知心理学という学問の価値観をあらためて意識し、さらに発展させていく契機にすべきであると考えます。心の機能としての「認知」は、射程範囲が広いため、他の関連学会でも類似した議論が行われていますが、その根幹を追求する当学会では、よりプロフェッショナルなレベルでの対話を推進させる必要があります。社会連携や産学連携のニーズも益々高まっており、学会としてのさらなる対応も求められています。一方で、邦文専門誌の在り方や、国内学会の意義なども問われ直されており、新たな展開が必要です。

学会のさらなる発展に向け、皆さんと協力体制を取りながら、こうした問題の解決に取り組みたいと思っています。ご支援、ご協力をどうぞよろしくお願い致します。

日本認知心理学会理事長
梅田 聡

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