Author: Yohtaro Takano (University of Tokyo)

Title: Japanese Culture Explored Through Experimental Design

Journal(書誌情報):
  A. Kurylo (Ed.)
  Inter/Cultural Communication.
  Thousand Oaks, CA: Sage, 2013, pp. 405-412.

ISBN: 978-1-4129-8693-9

Abstract:
[この論文は、本の1章なので Abstract がありません。概要を日本語で記し
ます。]
 この論文は、社会的認知(集団の認知)に関する研究を記した論文です。
 西欧では、近代の西欧文化を「個人主義」と規定し、他の文化を「集団主義」
と規定するイデオロギーが発達しました。このイデオロギーをベースに、「欧米
人は個人主義的、日本人は集団主義的」という認識が広まり、これが「日本人
論」の中心的なドグマになりました。このドグマは、近年、心理学的な比較文化
研究のベースにもなっています。
 ところが、1980年代から90年代にかけて盛んに行なわれた集団主義・個人主義
に関する実証的な国際比較研究のうち、「世界で最も個人主義的」と考えられて
きたアメリカ人と「世界で最も集団主義的」と考えられてきた日本人を直接比較
した研究を総覧してみたところ、アメリカ人と日本人のあいだには、そのような
差異は全く認められないことがわかりました(Takano & Osaka, 1999)。
 実証的な研究のうち、同調行動の研究については、「実験の参加者が内集団の
メンバーではなかったので、日本人の場合も、集団に同調するという行動が生じ
なかったのではないか」という疑義が呈されました。この疑問に答えるために、
日本で内集団のメンバーを対象にした実験を行なったのですが、その実験を記し
たのがこの論文です。実験の結果、日本人は、内集団のメンバーであっても、ア
メリカ人と同程度にしか集団に同調しないことが明らかになりました。
 この論文では、「文化差」が、他集団に対する敵意を煽ろうとする政治的な目
的にしばしば利用されてきたことを指摘し、「文化差」の主張には確固とした実
証的な根拠が不可欠であることを強調しています。

著者Contact先の email: takano@L.u-tokyo.ac.jp

日本語によるコメント(オプション,200-300字で)
 この論文は、Takano & Sogon (2008) を教科書向けに短縮し、書き直したもの
です。Takano & Sogon (2008) は、高野(2008)でも紹介しました。この論文の
一節は、パーソナリティ心理学の教科書 (Funder, 2012) に引用されています。

Takano, Y. & Osaka, E. (1999). An unsupported common view: Comparing
Japan and the U.S. on individualism/collectivism. Asian Journal of
Social Psychology, 2, 311-341.

高野陽太郎 (2008). 『「集団主義」という錯覚』 新曜社

Takano, Y. & Sogon, S. (2008). Are Japanese more collectivistic than
Americans?: Examining conformity in in-groups and the reference-group
effect. Journal of Cross-Cultural Psychology, 39, 237-250.

Funder, D. C. (2012). The Personality Puzzle (6th ed). Norton.