日本認知心理学会会員の皆さま,
日本認知心理学会研究法研究部会事務局の望月と申します。
研究法研究部会では,2023年9月に開催される日本心理学会第87回大会(於 神戸国際会議場・神戸国際展示場3号館)において日本認知心理学会・日本心理学会連携企画として以下のシンポジウムを開催することとなりました。ぜひ多くの方にご参加いただければ幸いです。
尺度構成はこうせい! 尺度に基づく心的構成概念の測定を改めて考える
概要
先年,経済学のジャーナルに感情を数値で表現できることを実証したと主張する論文が掲載され(Kaiser & Oswald, 2022),尺度構成に関する心理学等の分野の知識が共有されていないのではないかとウェブ上でちょっとした話題になった。しかし,心理学及び関連分野の研究者であれば尺度構成について十分な知識があると言えるのだろうか。英語圏ではScale Developmentの名を冠するテキストが複数出版されており,それに基づく授業も行われている。対して,本邦では尺度構成に関する専門的な科目を見かけることもない。属人的な経験や慣習によって尺度が扱われ,体系的な教育や方法論的な議論も十分になされていないのではないか。本シンポジウムでは,見逃されがちな尺度構成の基礎をふり返り,その妥当性を支える根拠を問い直し,現実的な運用の中で可能な取り組みについて議論したい。測定論的,科学基礎論的,歴史的アプローチのそれぞれの視点から話題提供を行い,指定討論を通して心理学における測定の対象と方法論について考えたい。
開催概要については https://sites.google.com/view/jscp-research-methods/%E6%9C%80%E6%96%B0%E3%81%AE%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A もご参照ください。
話題提供者と発表概要:
心理的構成概念はなぜ数量化できると考えられているのか
清水 裕士 先生(関西学院大学)
心理的構成概念には知能、パーソナリティ、態度、幸福感など、多岐にわたるが、これらの測定の基礎づけのため理論は実は異なっている。そこで本発表では、心理測定や数理心理学で研究されてきた測定の基礎づけのための理論を概観し、心理的構成概念がいかにして数量化できると考えられてきたのかを確認する。それを通して、心理学者が他の分野の研究者に対して「心を測る」ことの専門家であるといえるために理解すべきことを議論したい。
心理尺度を適切に利用するための方法としていま考えていること(仮)
仲嶺 真 先生(東京未来大学)
測定と(心理)統計は異なる。この前提を受け入れるならば、いわゆる心理尺度の妥当性確認はほとんど心的構成概念の測定の妥当性を確認していることにはなりえない。では、どうすれば心理尺度を使った心理学研究は可能になるのか。私は、心的構成概念の測定という考え(像 image)をやめて、別の、あるいは本来のかたち、すなわち、言語的応答として心理尺度を捉える方が良いと考えている。いま私が考えている心理尺度を適切に利用する方法についての素案を当日話したい。そのうえで、フロアの皆さんとの対話が進めば幸いである。
尺度構成は好きにせい!
椎名 乾平 先生(早稲田大学)
評定尺度の根拠は脆弱だが,頑強に使用され,被検者もその手続きを自然に理解するのはなぜだろうか? 評定尺度が人間を測る万能簡易測定器ならば発明者がいるだろうと考え調べてみた(心理学評論, 2022)。精神物理学(星の明るさ)ならヒッパルカスの2200年前の使用例、教育評価ならイエズス会の1599年の例がある。100年単位の歴史スパンで見ると、様々な人々が過去を気にせず理論も気にせず再発明してきたのがわかった。
指定討論者:
武藤 拓之 先生(大阪公立大学)
企画代表者・司会者:
井関 龍太(大正大学)
企画者:
望月 正哉(日本大学)・山根 嵩史(川崎医療福祉大学)
日程
日時:2023年9月16日(土) [大会2日目]09:00 〜 11:00
会場:日本心理学会第87回大会第2会場3F 301 (神戸国際会議場 3F 国際会議室)
参加方法:本シンポジウムへの参加は日本心理学会第87回大会への参加登録が必要です。詳細は https://confit.atlas.jp/guide/event/jpa2023/static/registration をご参照ください。