「認知科学」特集(第 29 巻第 1 号)論文募集のお知らせ
日本認知科学会編集委員会
2020 年 10 月

特集タイトル 認知科学から見た深層学習の地平線
掲載予定号      第 29 巻 1 号 (2022 年 3 月発行)
担当編集者 浅川伸一(東京女子大学),緑川 晶 (中央大学),高村 真広(広島大学)

1. 企画趣旨

認知科学,及び,関連する諸分野を深層学習モデルで結びつける意欲的な試みを広く募集する。本特集の企画意図 は,これまで多く行われてきた深層学習モデルを用いて種々の認知機能を説明する従来型の提案を募ることのみでは ない。むしろ逆方向,すなわち認知科学から深層学習を含む AI 研究への示唆や提言引き出し,知性をめぐる関連諸 分野の相互交流を図ることも大きな目的である。ここでは深層学習モデルを用いて,人間を含む知性の解明を意図し た研究を,人工知能 (AartificialIntelligence:AI) から自然知能 (Natural Intelligence:NI) の意味で A2N と表記し, 反対に,自然知能 (NI) の解明による深層学習モデルの機能,性能向上を意図した研究を N2A と表記する。本特集の意図は素朴な A2N 研究のみならず,NI に関心を持つ研究者からの貢献が期待される N2A を含んだ研究を広く募ることである。
A2N とは,限定された状況や課題条件下では人間を凌駕する課題成績を示すようになって久しい深層学習モデルを認知モデルとして扱う研究を指す。例えば,機能的脳画像,賦活データとの対応や等価性を議論する研究 (Cadieu et al., 2014;Mitchell et al., 2008; Yamins & DiCarlo, 2016) においても,近年の拡散テンソル画像トラクトグラフィなどに見られる画像化技術の進歩に伴い (Moeller et al.,2020),そうした発展は医学研究への応用にも向けられている (Vieira, Pinaya, &Mechellia, 2017)。一方,N2A とは AI 研究に対する認知研究からの貢献である。一例を挙げれば Hassabis らは,これまで,現在, そして,これから,という観点から,「神経科学にインスパイアされた人工知能」として以下の項目を挙げ,神経科 学が AI を加速させる可能性を論じた ( これまで: 深層学習,強化学習,現在:注意,エピソード記憶,作業記憶, 継続学習(内容的にはマルチタスク学習,転移学習,これから: 物理世界の直感的理解,効率的学習,内容的には, 一撃学習,ゼロショット学習,想像と計画,仮想的な脳活動解析)(Hassabis, Kumaran,Summerfield, & Botvinick, 2017)。Hassabis らの示唆は神経科学から AI について論じている,人間の知的活動を扱う認知科学,認知心理学, 認知神経心理学,などの諸分野から AI についても同じようなことが言えると考える。これら項目に加えて,認知研究と人工知能とのこれまでの経緯を踏まえた展望,さらに,神経心理学,精神医学 (Dayan & Abbott, 2001; Friston, Stephan, Montague, & Dolan, 2014)
や,芸術,美学(https://deepart.io/latest/)においても同様の相互交流に貢献する研究も歓迎する (Zhu, Park, Isola, & Efros, 2017) 。

2. 特集で扱う論文
日本語または英語で書かれた研究論文,展望論文,短報論文,あるいは資料論文を募集する。新規な研究成果を含む実験,理論,シミュレーション,応用,あるいは症例報告究など,認知科学に貢献しうる研 究を対象とする。認知科学に貢献するものだけでなく,関連書領域への示唆,挑戦的な試みを歓迎する。

3. 応募方法
■ 応募資格 認知科学の研究者であれば誰でも投稿できる(詳しくは「認知科学」の投稿規程を参照)。
本特集では,プロポーザル方式で原稿を募集する。執筆を希望する場合は,プロポーザル投稿をすませた上,期日 までに論文原稿を送付する必要がある。プロポーザル投稿は,2021 年 4 月 3 日(土)までに,論文タイトル,論文種別(研究論文,展望論文,短報論文,あるいは資料論文),著者氏名・所属・連絡先(住所,電話番号,e-mail アドレス),1000 字程度のアブストラクト,キーワード(5 個程度)を電子メールにて提出する.投稿する論文は,「認知科学」の投稿規程と執筆要領にしたがうものとする。

■ 提出先 プロポーザル投稿は以下のアドレスに提出するものとする。
jcss2021.deeplearning[at]gmail.com [at] を @ に置き換えること

4. 日程
1. 2021 年 04 月 03 日 (土) プロポーザル投稿締め切り
2. 2021 年 04 月 30 日 (金) プロポーザル採択通知 の執筆依頼
3. 2021 年 07 月 04 日 (日) 初稿投稿締め切り
4. 2021 年 08 月中旬頃 第一回査読結果返送
5. 2021 年 11 月上旬頃 第二回査読結果返送
6. 2021 年 12 月 05 日 (金) 最終稿 締め切り
7. 2022 年 03 月 初 旬 29 巻 1 号 発 行

文献
– Cadieu, C. F., Hong, H., Yamins, D. L. K., Pinto,  N.,  Ardila,  D.,
 Solomon,  E.  A.,  Majaj,  N.  J.,  &  DiCarlo,  J.  J.  (2014). Deep
neural networks rival the representation of primate IT cortex  for
core  visual object recognition .  PLoS Computational Biology, 10.
– Dayan, P., & Abbott, L. F. (2001). Theoretical neuroscience.
Cambridge, MA: MIT press.
– Friston, K. J., Stephan, K. E., Montague, R., & Dolan, R. J. (2014).
Computational psychiatry: the brain as a phantastic organ. The Lancet
Psychiatry, 1, 148—158.
– Hassabis, D., Kumaran, D., Summerfield, C., & Botvinick, M. (2017).
Neuroscience-inspired artificial intelligence. Neuron, 95, 245-258.
– Mitchell, T. M., Shinkareva, S. V., Carlson, A., Chang, K.-M.,
Malave, V. L., Mason, R. A., & Just, M. A. (2008). Predicting human
brain activity associated with the meanings of nouns. Science, 320.
– Moeller, S., Kumar, P. P., Andersson, J., Akcakaya, M., Harel, N.,
Ma, R. E., Wu, X., Yacoub, E., Lenglet, C., & Ugurbil, K. (2020).
Diffusion imaging in the post hcp era. International Society for
Magnetic Resonance in Medicine.
-Vieira, S., Pinaya, W. H., & Mechellia, A. (2017). Using deep
learning to investigate the neuroimaging correlates of psychiatric and
neurological disorders: Methods and applications. Neuroscience and
Biobehavioral Reviews, 74, 58-75.
– Yamins, D. L. K., & DiCarlo, J. J. (2016). Using goal-driven deep
learning models to understand sensory cortex. Nature  Neuroscience,
19, 356-365.
– Zhu, J.-Y., Park, T., Isola, P., & Efros, A. A. (2017). Unpaired
image-to-image translation using cycle-consistent adversarial
networks. arXiv preprint, [cs.CV].

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