日本心理学会第79回大会 一般公開シンポジウム
二人で同じ花を見るとなぜ美しいか?
  ―「共視」の実験心理学、発達心理学、精神分析学

日時・場所
日時:2015年9月22日(火) 9:20~11:20
場所:名古屋国際会議場第二会場白鳥ホール(南)
地下鉄名港線「日比野」駅または地下鉄名城線「西高蔵」徒歩5分
◇日本心理学会第79回大会(9月22―24日)1日目に行われる公開シンポジウムです。
会員・非会員によらず、どなたでもご参加頂けます(入場無料)。

概要
 「心」を科学的に取り扱う学問として心理学が誕生し、約150年近くが経ちま
した。その間、心理学は細分化し、様々な立場やアプローチが存在するようにな
りました。その結果、似たような研究がなされているにもかかわらず、また、互
いの領域を行き来し対話をする機会はあまり多くありません。
 このシンポジウムでは、共視、あるいは共同注意という現象に焦点をあてま
す。子どもは、発達にともなって、親が指さす方向に視線を向けるようになりま
す。このとき、親子が同じものに注意をしている状態ができあがります。このよ
うな状態を、基礎心理学では「共同注意」と呼んでいます。親子が同じものを見
て、同じような感情を共有することが、共感性の発達にとって重要であることも
わかってきています。そこで、横澤一彦先生には実験心理学の立場から、また明
和政子先生には発達心理学の立場から、共同注意、共感、感性といった最近の話
題を提供して頂きます。
 一方、日本の浮世絵には、母子が同じ対象を見ているというモチーフ(共視)
が繰り返し現れることが、北山修先生の研究で明らかになりました。心理学が共
同注意という概念を「発見」するまでもなく、母子関係において共視が重要であ
ることは、古来より、我が国の母子関係では自明のことでした。そこで、北山先
生には、「共視」を題材に、我が国の母子関係について精神分析学の立場から、
解説をいただきます。
 「あの素晴らしい愛をもう一度」(北山先生作詞)の歌詞に登場する情景であ
る、二人で同じ花を見て二人がともに「美しい」と共感することの基底にある人
間の心の成り立ちを、このシンポジウムでは、領域を超えて存分に議論したいと
思います。
 専門家の方のみならず、多くの方々のご参加をお待ちしております。

企画
熊田 孝恒(京都大学)
岩井 律子(理化学研究所)
司会
熊田 孝恒(京都大学)
話題提供者
北山 修(北山精神分析室、白鴎大学)
横澤 一彦(東京大学)
明和 政子(京都大学)

講演者の経歴
北山 修
1972年、京都府立医科大学卒業。
ロンドンのモーズレイ病院及びロンドン大学精神医学研究所にて2年研修後,北
山医院(現南青山心理相談室)院長を経て, 2010年春まで九州大学大学院人間環
境学研究院・医学研究院教授。現在は、九州大学名誉教授、白鴎大学副学長・兼
特任教授、国際基督教大学客員教授。医学博士。精神分析家。主な著書に『幻滅
論』(みすず書房、2001)『共視論』(共著、講談社、2005)』『劇的な精神分
析入門』(みすず書房、2007)『覆いをとること・つくること』(岩崎学術出版
社、2009)『評価の分かれるところに――「私」の精神分析的精神療法』(誠信書
房、 2013年)など。
同時にミュージシャンとして、大学在学中にザ・フォーク・クルセダーズ結成に
参加。’67年の「帰って来たヨッパライ」が代表作。作詞の仕事を続け、’71年
「戦争を知らない子供たち」で日本レコード大賞作詞賞を受賞。現在、平仮名の
ペンネームを使用。現在は、9月23日に渋谷公会堂の桂文枝を迎えて落語と講
演、そして音楽を統合する「アカデミックシアター」の準備中。

横澤 一彦
1981年、東京工業大学大学院総合理工学研究科修士課程修了
NTT基礎研究所主幹研究員、ATR視聴覚機構研究所主任研究員、東京大学生
産技術研究所客員助教授、米国南カリフォルニア大学客員研究員、カリフォルニ
ア大学バークレイ校客員研究員などを経て、現在東京大学大学院人文社会系研究
科心理学研究室教授。工学博士。日本認知科学会会長、日本心理学会理事、認知
神経科学会評議員などを歴任。実験心理学、認知科学が専門で、注意、オブジェ
クト認知、身体と空間の表象、感覚融合認知、美感、共感覚などの統合的認知の
研究に従事。主な著書として「視覚科学」(勁草書房, 2010)。

明和 政子
1999年、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。京都
大学教育学部在籍中より、京都大学霊長類研究所にてチンパンジーの認知機能に
ついて比較認知科学のアプローチから研究を行う。第一子出産後、胎児期からの
ヒトの心的機能の解明にも着手し、「比較認知発達科学」という新たな学問領域
を開拓する。京都大学霊長類研究所研究員、滋賀県立大学人間文化学部専任講
師、京都大学大学院教育学研究科准教授をへて、現在、同教授。おもな単著に
『なぜ「まね」をするのか(河出書房新社, 2004年)』、『心が芽ばえるとき―
コミュニケーションの誕生と進化(NTT出版, 2006)』、『まねが育むヒトの心
(岩波書店, 2012)』など。