日本認知心理学会公開シンポジウム「認知心理学のフロンティアXV:顔認知からみる社会的コミュニケーション」ご報告

シンポジウムでは、企画者である布井雅人氏(椙山女学園大学)が、公開シンポジウムの企画趣旨を説明した後、4名が講演を行った。
まず企画者でもある日根恭子氏(豊橋技術科学大学)が、「顔記憶と個人情報」と題して、個人情報として名前は思い出されにくいことや,顔を思い出す際にはパーツではなく全体を思い出す方が良いこと,自分の顔の記憶は思ったよりも正確でないことなどを紹介した。
次に魚野翔太氏(筑波大学)は、「顔認知と自閉スペクトラム症」と題して、自閉スペクトラム症における他者理解の困難さの原因として,他者の顔や目に適切に注意を向けられないことや,他者の表情の意図的な模倣が生じにくいことなどがあることを紹介した。
次に上田彩子氏(日本女子大学)は、「心理学から考える魅力的な顔」と題して、魅力的と感じられやすい顔が有する特徴や,魅力的な顔を見た際に脳の報酬系が活動すること,さらには表情や視線などの様々な要因によって魅力は変えられるものであることを紹介した。
最後に大島直樹氏(愛知産業大学)は「ロボットを介した対話型AIとのコミュニケーション」と題して、ロボットに目が存在することの重要性や,人間では行わないような少し外れた脱力系の発言によって会話の敷居が下がり,その場の会話が促進される可能性があることを紹介した。
高校生や企業の方など、日本認知心理学会の会員以外の参加者にも参加登録いただき、16名の対面参加者、91名のオンライン参加者、計107名の参加者を得て、シンポジウム中は様々な観点から議論が行われた。
本シンポジウムを通じて、参加者間で顔が有する情報の重要性や,それをやり取りすることの重要性について広く共有できたと考えている。