2023年度日本認知心理学会優秀論文賞

日本認知心理学会では,2021年度より,認知心理学会優秀論文賞を設けることとなりました.2022年度からは,優秀論文賞のもとに特別賞,奨励賞の2種類が設けられています.
機関誌「認知心理学研究」の前年度に完結した巻に掲載された原著論文の中から,優秀論文賞選考委員会が,規程に基づき,認知心理学の発展において特に大きな貢献を果たした論文を選考し,優秀論文特別賞,優秀論文奨励賞として顕彰いたします.

【選考経過】
2023年度の優秀論文賞選考委員会は,規程により,常務理事である仲 真紀子氏(委員長),理事である外山 紀子(副委員長),厳島 行雄,北神 慎司,楠見 孝,原田 悦子,松本 絵理子,山 祐嗣各氏,および理事長である熊田 孝恒氏の9名で構成された.
対象となった論文は,「認知心理学研究」第20巻1号,2号に掲載された5編であった.審査は日本認知心理学会優秀論文賞規程および優秀論文賞選考手続きに則って行い,第一次審査,第二次審査の結果を総合的に判断し,最終的に,以下の2編を優秀論文賞とした.
認知心理学会第21回大会において授賞式が行われた.

【2023年度認知心理学会優秀論文特別賞】
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(論文タイトル,著者名)
「検索の意図的な制止による能動的忘却:Think/No-Thinkパラダイムの20年」
 西山 慧・齊藤 智

(授賞理由)
記憶研究の重要な側面は,どのような情報であれそれを記憶に留める機制とそれを可能にする条件を明らかにすることであり,もう一方で記憶された情報を忘却させる機制を明らかにすることであろう.後者は残念ながら,前者ほど盛んに研究されてこなかった.しかし,忘却に関連する現象を解明する方法論の確立が,それまでには不可能であった忘却の不思議を明らかにしつつある.本論文は,忘却現象への一つのアプローチ方法であるThink/No-Think (TNT) パラダイムを用いた研究を丁寧に総覧し,このパラダイムで得られたそれまでの知識を批判的に吟味し,その成果の意味,限界を丁寧指摘し,今後の当該領域における研究の方向性を打ち出した.このことは学術的に高く評価され,優秀論文(特別賞)に値するものと判断された.
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【2023年度認知心理学会優秀論文奨励賞】
(論文タイトル,著者名)
「嘘に伴う認知的負荷が有効視野に及ぼす影響:嘘の虚偽性と意図性に着目して」
 後藤理咲子・北神慎司

(授賞理由)
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人間が嘘をつく場合に,認知的負荷が高まることが知られている.従来の研究では,認知的ふかの指標として発話潜時などが用いられてきたが,この研究では,認知的負荷が有効視野を狭めるという先行研究に着目し,2つの実験で実験参加者が嘘をつく際の有効視野が計測された.特に,相手を騙そうという意図を持って嘘をつくか否かを教示により操作した.その結果,意図的に相手をだますこと(嘘の意図性)が有効視野を狭めることが明らかになった.審査においては,課題や条件の設定などに問題が指摘されたが,研究のアイディアのオリジナリティや今後の発展性に対する評価は高く,優秀論文奨励賞にふさわしい論文であるとの結論に至った.
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※優秀論文賞ページもご覧ください。
https://cogpsy.jp/cogpsy/prize/paper