日本認知心理学会公開シンポジウム「認知心理学のフロンティアXIV 自動運転システムとの付き合い方 -何が起きるか、どう研究するか-」のご報告
日本認知心理学会では,2022年12月17日(土)に、公開シンポジウム「自動運転システムとの付き合い方 -何が起きるか、どう研究するか-」をZoomウェビナーにてオンライン開催した。
シンポジウムでは5名が講演を行った。まず平岡敏洋氏(日本自動車研究所)が、「自動運転技術の現状と問題点:副題:自動運転車両とドライバおよび他の交通参加者との間に生じうる過信問題」と題して、現状の自動運転システムの技術的限界や、社会実装するうえで問題となりうるシステムへの過信にまつわる実験結果を報告した。次に企画者でもある紀ノ定保礼(静岡理工科大学)は、「他車の運転支援システムを信頼することが、ドライバーのリスクテイキング行動に及ぼす影響」と題して、平岡氏と同様にシステムへの過信に由来するリスクテイキング行動に関して実験結果を報告した。次に温文氏(東京大学)は、「自動運転におけるドライバーの運動主体感に対する検討」と題して、システムが車両挙動を自動的に制御する際における、制御方法とユーザの運動主体感の関係について報告した。次に横井良典氏(京都橘大学)は「自動運転車に対する信頼の規定因の検討」と題して、ヒトと自動運転システムでは求められる信頼の水準が異なる可能性があることを報告した。最後に木村元洋氏(産業技術総合研究所ヒューマンモビリティ研究センター)は、「生体信号計測による自動車ドライバーの注意資源配分状態の評価」と題して、運転中におけるリアルタイムの生体信号計測技術や、それにより推定可能な心理状態について話題提供を行った。
高校生や企業の方など、日本認知心理学会の会員以外の参加者にも参加登録いただき、計101名の参加を得て、シンポジウム中は様々な観点から議論が行われた。本シンポジウムを通じて、参加者間で認知心理学と他の研究領域間の連携可能性や、社会的問題との接点、そして今後ますます研究の可能性が開かれていることを広く共有できたと考えている。