日本認知心理学会第19回大会 ベーシック&フロンティアセミナー
認知心理学研究に役立つ知識やスキルを提供するセミナーとして,ベーシックセミナーは日本認知心理学会の大会の前日に開催してきました.本年度も昨年に引き続き,Zoomウェビナーにて行います.学部生や社会人の方も含め,皆様奮ってご参加下さい.
日時: 2022年2月27日(日) 13時00分~16時00分
開催形式: Zoom ウェビナー
※参加費不要,どなたでも参加できます.申込方法は後日詳細を案内いたします.
プログラム
「認知心理学における脳研究の可能性を考える」
企画・司会:笹岡貴史(広島大学)
13:00~13:10 セミナーの趣旨説明 (笹岡)
13:10~13:50 話題提供①「fMRIを用いたヒト脳機能研究」
阿部修士(京都大学・こころの未来研究センター)
概要:本セミナーでは機能的磁気共鳴画像法(fMRI) の基本的原理と研究手法を概観し,ヒト脳機能研究におけるfMRI の役割について考察する.近年急速に発展しているマルチボクセルパターン分析についても紹介し,今後の展望について議論したい.
13:50~14:30 話題提供② 「頭皮上脳波で抽象的な心理現象は測れるのか」
金山範明(産業技術総合研究所)
概要:頭に電極を設置すれば脳反応が計測できる頭皮上脳波は,その手軽さから,近年様々な領域で利用されている.生理心理学領域で明らかにされてきた感覚誘発電位やアルファ波,SSVEPなどロバストな成分を用いれば,産業応用を含め様々な場面に活用可能なことは事実だ.しかしそこで見ているものは本当に脳反応なのか,その計測法や解析法によっては疑わしい場合もある.独立成分分析,信号源解析,位相同期解析,因果性解析,Multivariate Temporal Response Function (mTRF) などを取りあげ,その可能性と問題点を概観しながら,認知心理学の研究ではどんな時に利用するのが適しているかを議論したい.
(休憩10分)
14:40~15:20 話題提供③ 「統合情報理論に基づく意識の神経基盤の探索」
小野田慶一(追手門学院大学)
概要:統合情報理論によれば,ある物理的なシステムにおいて膨大な情報量が統合されるとき意識は創発され,意識量の数値化と,意識のコアの推定が可能となる.この理論に基づき,Human Connectome Projectと睡眠時における脳波fMRI同時測定データから意識のコアを探索した研究を紹介する.
15:20~16:00 総合討論・フロアディスカッション
<企画趣旨>
本セミナーでは,fMRIや脳波などの脳研究について基礎的な内容から最新のトピックまでを紹介するとともに,心理学において脳を測定することの意味について理解を深めるだけでなく,主に心理学を志す学生に脳計測に興味を持ってもらうことを目的とする.まず,脳研究によく利用されているMRIと脳波について,それらを専門とする研究者からそれを用いることで何が分かるのか,また,計測手法のような基礎的な内容から最新の解析手法などに至るまで,幅広く紹介いただく.一方で,近年Human Connectome Projectのように,一定のプロトコルで取得済みの脳計測データセットを使って解析を行うことで,脳を測らずとも脳研究が行えるようになってきている.このような最新の脳研究のアプローチについても紹介する.総合討論では,認知心理学における脳研究の可能性について意見交換を行う.特に脳計測による研究を志す参加者より,基本的な質問・疑問を広く受け付けることで,本セミナーをきっかけに脳研究に対するハードルが下がり,脳研究への興味が深まることを期待する.
なお,上記プログラムに加えて,優秀発表賞受賞の方の講演も予定しております.詳細は後日お知らせいたします.