2022年度 独創賞受賞研究: 「百寿者の認知機能に関する研究」 権藤恭之
                              

会員から推薦された研究と、過去に候補となった複数の研究の中から、選考委員会が独創賞規約に従い慎重に選考を進めた結果、今回は次の研究に独創賞を授与することに決まりました。

「百寿者の認知機能に関する研究」
(大阪大学大学院人間科学研究科 教授 権藤恭之 ごんどう やすゆき)

 本研究は超高齢化社会が進行する今日の状況の中で、とりわけ100歳を超える長寿者の認知機能の特徴を的確に把握し、それらの知見を積み重ねて健康長寿に有効活用する重要な課題に取り組んだものです。研究遂行にあたって、超高齢者へのアプローチや、学際的研究ネットワークの構築などが広範囲になされました。そして、百寿者の認知機能の評価を簡便ながら的確に行うことができ、しかも十分な信頼性や妥当性をもつ尺度である「超高齢者用認知機能評価尺度(CAQ-Oldest-Old)」が開発され、超高齢者の認知機能がこれまでの評価法よりも高く維持されている可能性が示されました。また、長寿を理解する基本的な考え方として、教育歴などの後天的要因を重視する環境影響モデルと、遺伝などの先天的要因を重視する生物学的要因モデルをとりあげ、この分野の研究者が議論を展開する上で重要な枠組みを提供しました。以上の取り組みは百寿者が世界で最も多い日本の特徴を活かし、重要な知見を世界に発信する研究といえます。

 選考の対象となった主な論文は以下の2点でした。
1)Gondo, Y., Masui, Y., Inagaki, H., & Hirose, N. (2013). How do we measure cognitive function in the oldest old? A new framework for questionnaire assessment of dementia prevalence in centenarians. In L.G. Nilsson & N. Ohta (Eds.), Dimentia and Memory (pp. 97–109).
2)Gondo, Y., & Poon, L. W. (2007). Cognitive function of centenarians and its influence of longevity. In L. W. Poon & T. Perls (Eds.), Annual review of gerontology and geriatrics: Biopsychosocial approaches to longevity (pp. 129–149). New York: Springer.

 なお、日本認知心理学会第20回大会(神戸大学/関西学院大学)において、独創賞受賞講演が行われる予定です。是非、ご参加ください。

                          独創賞選考委員会
                          委員長 行場次朗