日本認知心理学会では,2021年度より,認知心理学会優秀論文賞を設けることとなりました。
機関誌「認知心理学研究」の前年度に完結した巻に掲載された原著論文の中から,優秀論文賞選考委員会が,規程に基づき,認知心理学の発展において特に大きな貢献を果たした論文を選考し,優秀論文賞として顕彰いたします。

【選考経過】
2021年度の優秀論文賞選考委員会は,規程により,常務理事である仲 真紀子氏(委員長),理事である外山 紀子(副委員長),北神 慎司,清水 寛之,川口 潤,中尾 敬,富山 尚子,西崎 友規子各氏,および理事長である熊田 孝恒氏の9名で構成された。
対象となった論文は,「認知心理学研究」第18巻1号,2号に掲載された4編であった。審査は日本認知心理学会優秀論文賞規程および優秀論文賞選考手続きに則って行い,第一次審査,第二次審査の結果を総合的に判断し,最終的に,以下の2編を優秀論文賞とした。
認知心理学会第19回大会において授賞式が行われた。

【2021年度認知心理学会優秀論文】(第18巻掲載順に提示)
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(論文タイトル,著者名)
「視覚的オブジェクトの「機能」による認識」 太田 直斗, 相澤 裕紀, 厳島 行雄

(授賞理由)
オブジェクト認知における基本カテゴリー優位性はよく知られているところであるが,多くは自然カテゴリーにおけるオブジェクト認知を扱った研究で示されてきた。筆者は,人工オブジェクトの認知において,自然オブジェクトにはない「機能」という側面に着目し,カテゴリーとオブジェクトの一致・不一致判断課題を用いてその基本カテゴリーとは異なる認知レベルがあることを明らかにするとともに,RSVP課題を用いて,より初期の処理段階における「機能」の影響を検討した。その結果,初期の処理段階でも,基本カテゴリーに近い形で機能カテゴリーの影響がみられることを見いだした。全体として,精緻に組み立てられた複数の実験を実施しており,オブジェクト認知に関する基礎研究として今後が期待できる研究と考えられる。以上の点から,優秀論文賞にふさわしい論文であると評価された。

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(論文タイトル,著者名)
「妨害刺激の抑制に無視手がかりが与える影響:事象関連電位による検討」 川島 朋也, 松本 絵理子

(授賞理由)
視覚探索課題において妨害刺激の特徴が既知である場合に,その影響を受けにくくなるという現象(無視手がかり効果)の処理過程に関し,先行研究における対立的な説明に対して,明快な仮説をたて,脳波の事象関連電位を用いて検証した研究である。実験計画や実験,データ解析などについては確実に実施されており,データの信頼性は高いと判断できる。また,仮説の導出に至るまでの論理の組み立てや,得られた結果に対する堅実かつ丁寧な考察なども高く評価できる。一方で,審査においては,脳波の結果と反応時間の結果が必ずしも一貫していない点について,論文の中で綿密に議論されてはいるものの,課題の妥当性など含め再検討の余地があるなど幾つかの指摘があったが,内容の全体的な完成度の高さに加えて,将来の発展性なども考慮して,優秀論文賞にふさわしい論文であると評価された。
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※論文賞の説明は
https://cogpsy.jp/cogpsy/prize
今年度選考については
https://cogpsy.jp/cogpsy/prize/paper
にも掲載しております。
規程は
https://cogpsy.jp/cogpsy/prize/paper/kitei
に掲載しております。