認知心理学研究に役立つ、知識やスキルを提供するセミナーとして、ベーシックセミナーは
認知心理学会の大会の前日に開催してきました。本年度より、ベーシックセミナーに加えて、
認知心理学会優秀発表賞受賞者による研究紹介も行います。名前も、ベーシック&
フロンティアセミナーになりました。今回はプログラムのように、認知心理学会優秀発表賞
受賞講演を2件行った後、2名の講師によるベーシック&フロンティアセミナーを開催いたし
ます。学部生や社会人の方のご参加も歓迎いたします。今回は立命館大学いばらきキャンパス
で行われる認知心理学会第16回大会の前日に開催いたします。皆様奮ってご参加下さい。 ※ 参加をご希望の方はメールにて事前にお申し込みください。 日時 : 2018年8月31日(金) 12時50分~17時 場所 : 立命館大学大阪いばらきキャンパスA棟2階 AS257教室 会費 : 当日受付で徴収 (会員の場合:学部生 無料、院生 無料、社会人4000円) (非会員の場合:学部生 無料、院生2000円、社会人5000円) 会員、学部生、院生の方は当日の受付にて会員番号や学生証をご提示ください。 申込み締切り: 2017年8月24日 (金) 申込方法 :メールにて事前申し込み 認知心理学会事務局宛にお申し込みください。 e-mail: g-office[at]cogpsy.jp ([at] を@に置き換えてください) メールの件名を「ベーシック&フロンティアセミナー参加申込」として 氏名、所属、連絡先 (メールアドレス)、会員・非会員の区分、 学部生・院生・社会人の区分をお知らせください。 プログラム 12:30 受付開始 12:50 開会の辞                   箱田裕司(京都女子大学発達教育学部) 13:00-14:20 第14回日本認知心理学会優秀発表賞受賞講演                司会:箱田裕司(京都女子大学発達教育学部) 「偽り表情の認識における空間周波数情報の関与」 木原 健(鹿児島大学大学院理工学研究科),武田裕司(産業技術総合研究所情報・人間工学領域) 「オンライン認知実験の可能性を探る」 眞嶋 良全(北星学園大学社会福祉学部) 14:30-15:20 セミナーⅠ 司会:朝倉暢彦(大阪大学数理データ科学教育研究センター) 「インターネットを利用した心理学実験・調査に関する諸問題:より適切なデータを得るためには」
 三浦麻子(関西学院大学文学部教授・大阪大学大学院基礎工学研究科特任教授) インターネットを利用した心理学実験・調査に関する諸問題:より適切なデータを得るためには
オンライン調査・実験は心理学におけるデータ収集の手法の1つとしてすでに定着した。しかし,
日本においてその質に関する検討は十分になされているとは言いがたい。オンライン調査・
実験は研究者が直接回答行動を観察できない状況でデータが収集されるため,回答者が十分な
注意を払って回答していることを確認できない。特に,回答者が謝礼目的で多くの調査や実験
に参加するように動機づけられている場合には,質問文や実験の教示を注意深く読まないまま,
できるだけ早く回答を終わらせるような回答行動を取る可能性がある。こうした問題は
オンライン調査・実験の普及以前からsurvey satisficingとして知られてきたが,オンライン
でのデータ収集においては特に問題になる可能性が高い。本セミナーでは,発表者らが
オンライン調査会社のモニタ会員とクラウドソーシングサービスを通して募集された参加者を
対象に行ってきた一連のSatisfice研究の結果を紹介し,より適切なデータを得るために研究者
がすべきことについて考える。 15:35-16:55  セミナーⅡ 司会:熊田孝恒(京都大学情報学研究科) 「ベイズ統計学の考え方と方法」岡田謙介(東京大学教育学研究科准教授) ベイズ統計は不確実性を確率によって表現し,データから得られた情報を用いてこの確率を更新して
いくことを原理とする体系である。平均値差や相関係数といったパラメータについても,帰無仮説や
対立仮説として表現されるような仮説についても,ベイズの定理を用いれば基本原理に従って確率を
更新していくことができる。このようにして,首尾一貫したデータ分析のための体系ができあがる。
近年,心理学や認知科学において改めてベイズ統計が注目を集めているが,この理由としては少なく
とも次の2点が指摘できる。第一に,従来の頻度論に基づく有意性検定の誤用や不適切な解釈による
弊害が無視できない水準に達してきたこと,第二に,データ生成メカニズムを反映できる
統計モデリングを実践する上でベイズ統計学の考え方や方法が役立てやすいことである。本セミナー
では,歴史的な経緯を踏まえつつ,まずベイズ統計の原理となる考え方について,そして上記2点の
特長について説明する。その上で,私自身が関わったものを含む,こうした特長を活かした,
ベイズ統計を用いた最近の心理学研究の具体例を紹介する。 閉会の辞                 乾 敏郎(追手門学院大学心理学部)