第1回日本認知心理学会優秀発表賞

第1回 日本認知心理学会優秀発表賞

日本認知心理学会優秀発表賞規定にもとづき、選考委員会において審議を重ねた結果、 推薦発表総数25件の中から、以下の5件の発表に、規定に定められた各評価部門の優 秀発表賞を授与することに決定いたしました。受賞者には、来年5月の年次大会(同志 社大学)で開催される総会にて、優秀発表賞を授与いたします。会員の皆様におかれま しては、今後とも日本認知心理学会大会におきまして数多くの良い発表をなされること をお願いいたします。

2003年 10月1日
日本認知心理学会優秀発表賞選考委員会委員長
太田 信夫

新規性評価部門

受賞者(所属):時津裕子(日本学術振興会特別研究員(DC1)/九州大学)

発表題目:「考古学的“鑑識眼”の研究:遺物カテゴリーの特性」

選考理由:本研究は発表者がこれまでおこなってきた考古学者の“鑑識眼”に関する一連 の研究の 1 つであり,氏が以前おこなった考古学遺物の観察方略に関する研究などを踏 まえつつ,鑑識の基礎となる知識構造を実験的に検討することを試みている。熟練技能 者が職人技として有する高度な認知技能の成立条件を,認知心理学的方法によって科学 的に解明しようとしたものであり,研究テーマの斬新さとともに,今後の発展が期待さ れる注目すべき研究と認められる。

 

技術性評価部門

受賞者(所属):野畑友恵・越智啓太(東京家政大学文学部・東京家政大学文学部)

発表題目:「ポジティブ・ネガティブの感情喚起が記銘に及ぼす影響」

選考理由:従来、ネガティブな感情の喚起が記憶にどのような影響を及ぼすかを検討した 研究は数多いが、ポジティブ、ネガティブの感情の効果を同時に、比較可能な方法で調 べた研究は数少ない。本研究は、事前の予備調査によって、両種の感情の質とその程度 を広範囲にカバーするように集めた刺激を用いて、偶発学習事態でその刺激の記憶に及 ぼす感情喚起の効果を調べた。ポジティブな感情を喚起する刺激はネガティブなものよ りも記憶が良いが、喚起される覚醒の程度が記憶に影響するのはネガティブな感情のみ であることを明らかにした。実験はきわめてシンプルであるが、もたらされた成果の理 論的意味やこの分野の今後の研究に及ぼすインパクトは大きい。

 

社会的貢献度評価部門

受賞者(所属):重森雅嘉・星野証・原田悦子(財団法人鉄道総合技術研究所・法政大学 社会学部・法政大学)

発表題目:「経験によるリスク認知の違い:(2) 職業経験の有無による相違」

選考理由:本発表は、社会的に注目されている医療過誤に関係するテーマを直接扱ってい る。特に、自由記述の方法を使用し、「目に見えるリスク」と「目に見えないリスク」 を分類、分析した点が秀逸である。そこから導き出された考察「専門的職業従事者(看 護学校生)は、職業場面における目に見えないリスクをよりよく指摘できるが、目に見 えるリスクに対して鈍感である」は、リスクマネジメントの教育に大きな影響を与える 内容といえよう。

 

発表力評価部門

受賞者(所属):吉田千里・乾敏郎(京都大学大学院情報学研究科・京都大学大学院 情報学研究科)

発表題目:「身体の回転に伴う空間記憶の変換過程」

選考理由:知覚者の身体移動がターゲットの位置の記憶におよぼす影響について、精緻に 計画された行動実験を実施して、明確な結論を導いている。実験の手続きに細かい工夫 があり結果の情報量も多いため、短時間で分かりやすく聞き手に伝えるにはスキルが必 要だが、無駄のない明快な説明に加えて、プレゼンテーションの構成、時間配分も大変 よく考えられていた。当該の研究結果のみならず、研究課題のもつ意義や面白さまで十 分に伝えられた発表であった。

 

総合性評価部門

受賞者(所属):亀谷誓一・原田悦子(麻布大学・法政大学)

発表題目: 「“観る”ことを促進させる音声ガイダンスの文章デザイン」

選考理由:第1に、若い研究者が明確なリサーチクェスチョンを出発点にして研究計画を 綿密に練り上げ、着実な実証的証拠をあげえた点が高く評価される。第2に、実証的な 証拠から現実の美術館や博物館展示の方法について認知具体的な提言を引き出してお り、成果の社会的貢献度が高いと考えられる。第3に、研究成果についての適切で美し いフィルムに準拠ししながら、聞き手にアピールするような明快で説得的なプレゼン テーションを行った点が高く評価される。

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