3/14に開かれます定例研究会(研究発表会および特別講演会)について,発表
予定の題目とアブストラクトができましたので,ご連絡致します。言語について
関心を持つ皆様と,楽しく,有意義な議論ができれば幸いです。みなさまのご参
加をお待ちしております。
第15回定例研究会(研究発表会)
・ 日時:2015年3月14日(土)13:30~17:00
・ 場所:法政大学 ボアソナードタワー11階 BT1104番教室(下記会場
案内をご参照下さい。)
・ 事前登録:人数把握のため事前に下記問い合わせ先までご連絡をお願い致し
ます。
・ プログラム
1)研究発表(口頭発表一人20分,発表者氏名敬称略)
猪原敬介(電気通信大学)
<タイトル>
日本語コーパスにおける部首と関連した言語出現の統計的規則性
<アブストラクト>
日本語には2000字を超える常用漢字があり,母語として日本語を学ぶ子どもに
とって,これは本来大きな困難である。しかし実際には多くの子どもは問題なく
漢字を学習していく。この学習を支える要因の一つとして,漢字に含まれる部首
が想定されている。これまでの先行研究は部首と意味との関係について主観的な
評定をさせるという方法論によってこのことを検討してきたが,本研究は大規模
日本語コーパスの解析および計算機シミュレーションにより,客観的な指標に
よって部首の効果について検討した。実験1では,同じ部首を持つ漢字同士が類
似した文および段落に出現する傾向があることが明らかになった。実験2では,
同じ部首を持つ漢字を含む名詞は,類似した動詞をその後に伴う確率が高いこと
が明らかになった。これらの結果は,子どもが学習時に触れる日本語の中に部首
と連動する言語出現の統計的な規則性が埋め込まれており,そのことが子供の学
習を助けている可能性を示唆している。
小山内秀和(京都大学)
<タイトル>
聞き手の知識状態による発話量調整は心の理論と関連するか?
<アブストラクト>
本研究は,聞き手と知識を共有しているときにみられる発話量の減少が心の理論
能力と関連するかを「ストーリーテリング課題」 (古見他, 2014) を用いて検討
した。その結果,参加者の発話量は聞き手と違う物語を読んだ条件よりも同じ物
語を読んだ条件で減少したが,心の理論能力との関連は見られなかった。
梶井直親(法政大学)
<タイトル>
アニメ理解過程に影響する状況的次元の検討
<アブストラクト>
本研究は,イベントインデックスモデルの枠組を用いて,アニメ理解に影響する
状況的次元について検討した。また,ストーリーアニメとギャグアニメの2つの
ジャンルの作品を用い,ジャンルの違いについても検討した。その結果,ストー
リーアニメとギャグアニメでは,それぞれ異なる状況的次元の変化が,理解過程
に関わっていることが示された。また,補助的変数のうち,BGMの終了が,両
ジャンルにおいて理解過程に関わっていることが示唆された。つまり,アニメを
視聴する際には,BGMが終了した時をキーとして,状況モデル更新を行っている
可能性が考えられる。今後,アニメ理解については,BGM以外の音響効果や,映
像の修辞など,さらなる変数の影響について検討する必要がある。
津村将章(九州産業大学)
<タイトル>
物語広告のクリエイティブに関する研究
<アブストラクト>
本研究では、これまで物語に関して研究が蓄積されている3つの分野(物語理
解・物語論・脚本論)を統合し、マーケティングROI(return on investment)
の観点から物語広告について分析を行うものである。さらに、ROIが高い物語広
告のクリエイティブをどのように制作するのかについて提言を行うことを目的と
している。 分析の結果、ROIが高い物語広告は次のような特徴が見られた。1.
目標、葛藤・困難の描写。2.達成・解決の描写。3.違和感の描写と解消。これら
の知見をもとに、ROIが低い物語広告への提言を行った。
根本勇也(法政大学)
<タイトル>
身近なネガティブ感情に対する筆記の影響
<アブストラクト>
本研究の目的は,自身の身近なネガティブ感情を筆記することによって,筆記
者の感情にどのような効果をあたえるかを,対立する2つの仮説を立てて検討す
ることであった。実験は大学生を対象に,映像刺激を見て自分が感じた気持ちを
筆記するネガティブ感情筆記群,映像刺激とは関係のない文章を書き写す作業を
行う中性話題筆記群,筆記作業を行わずに静かに待機する無筆記群の3群に無作
為に分けた。各群の多面的感情状態尺度の回答を分散分析によって比較した。そ
の結果,多面的感情状態尺度の下位尺度の1つである抑うつ・不安項目群におい
て,実験操作後にネガティブ感情筆記群が中性話題筆記群より有意に高くなり,
非活動的快項目群において,ネガティブ感情筆記群が無筆記群より有意に低く
なった。身近なネガティブ感情について筆記を行うとネガティブ感情が高まり,
ポジティブ感情が低くなる傾向が示され,日常的な場面で筆記を行う場合に注意
が必要なことがあると示唆された。
2)特別講演(1時間)
柴崎秀子先生(長岡技術科学大学)
<タイトル>
L2読解モデルの構築-L1能力はL2読解のどこにどのように影響するか-
<アブストラクト>
120名の日本人高校2年生を対象に実験を行い,作動記憶容量,L2語彙知識,L2文
法知識を説明変数とし,一般的な内容のL2テキスト及び特殊な内容のL2テキスト
を従属変数とするSEMによるモデルを構築した。さらに,L1リテラシー(この場
合は国語の総合能力)を変数に加えたところ,適合度の高いモデルが構築され
た。同時に,L1リテラシーがL2語彙能力の説 明変数であること,L1リテラシー
が高い読み手はL2読解における推論能力が高いことが示された。このことから,
英語の語彙数を増やすには国語の能力が必要であること,特殊な内容の英語テキ
ストを推論能力を使って理解するにも国語の能力が必要であることが示唆された。
本発表では,実験を行う際に起こる問題に対する対処についてもお話ししたいと
思います。
3)懇親会(自由参加)
・ 参加費:無料(研究会終了後,親睦会を計画しています。こちらは実費ある
いは会費制とします。)
会場案内:
法政大学市ヶ谷キャンパス
ボアソナードタワーは,市ヶ谷キャンパス内の26階建てのビルです。
エレベーターはオレンジ(低層階用)と青(高層階用)の2種類あります。
どちらもご利用できますが,青いエレベータの方が便利です。
そのまま直接,11階のBT1104教室までお越しください。
守衛所等で受け付けなどは必要ありません。
なお,緊急の連絡先は,03-3264-9382(福田由紀研究室直通),
03-3264-5024(実験室付属の準備室)です。