日本認知心理学会
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2004年12月15日

厚生労働省「痴呆」に替わる用語に関する検討会

座長 高久史麿 殿

社団法人日本心理学会

日本基礎心理学会
日本認知科学会
日本認知心理学会
(50 音順)
 
意見書

2004年11月19日厚生労働省『「痴呆」に替わる用語に関する検討会』のご報告により,現在の「痴呆症」という呼称を「認知症」に変更するという案が提示されました.これまでの貴会のご検討には,敬意を表するものでありますが,私ども4学会は,この新呼称案に対し,下記の理由から反対し,代替案として「認知失調症」という呼称を提案します.

(1)「認知症」への反対理由:

「認知」は人間の心的・知的情報処理過程全体を示す概念であり,「認知症」という新呼称では,一般の方々にとっても専門家にとっても,具体的にいかなる状態を指すか極めて不明確である.これは患者およびその家族にとっても望ましい状態ではない.また,現時点では「認知」ということばの普及度が低いために,今後,意味が誤って固定化される危険性も大きい.
このような新呼称の問題点を回避するには,「認知」に「何らかの変調が生じている」ことを指す表現を加えて意味を明確にすることが必要であり,それによって「認知」という概念についても正確な理解が促されるものと期待できる.

(2)対案として「認知失調症」を提案する理由:

人の心的・知的情報処理過程に全体として変調が生じていることを示すには,「認知障害」「認知失調症」などの呼称が考えられる.「認知障害」については脳神経内科における固有の診断名としてすでに用いられており,新たに“dementia”の訳語として用いることは混乱を招くであろう.また,認知機能が部分的には保たれていながら,全体としての統合・調整に不全を来しているというのが一般的なdementiaの様態であると考えられるので,その意味で「認知失調症」という呼称は,多様な病態を示すdementia の訳語としてふさわしいと考える.

(3)パブリックコメントの機会ではなく,今回の意見書によって意見を表明する理由:

当4学会のほとんどの会員は,今回の呼称変更案を11月20日付の新聞等の報道によって初めて知ることになったので,9 月13 日から10 月29 日に行われたというパブリック・コメントに参加する機会をもちえなかった.
しかし,心理学・認知科学という学問分野において人間の「認知」を研究課題としている学術団体として,今回の新呼称提案は看過することができないと考え,意見を申し述べるものである.
この間,報道を通じて新呼称提案を知った多くの会員から,新呼称案が不適切であることを表明すべきであるとの意見が各学会に寄せられ,急遽4学会で意見を取りまとめて,このような意見書提出に至った次第である.

以上

 
本意見書に関する連絡窓口:
〒102-8160
東京都千代田区富士見2-17-1
法政大学文学部心理学科内
日本認知心理学会事務局
http://cogpsy.jp/index.html
 

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関連情報サイト:「認知症」に関する資料(大阪大・篠原先生)


 
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