ワークショップの案内
千葉大学COEスタートアッププログラム・ワークショップ
多感覚認知における適応
知覚認知過程の諸特性は,環境における適応を通して獲得されてきたものと考
えられます。中でも,多感覚間での情報統合の過程や相互作用の様式は,環境の
要因に対応して変化する可塑性を持つことが多くの研究によって示唆されていま
す。このたび,実験心理学や脳機能イメージング,認知神経科学といった行動科
学の異なる方法論での最新の研究成果をもとに,多感覚間の統合・相互作用とそ
の適応について討論する機会を設けました。本ワークショップでの議論を通し
て,異なる感覚様相間の相互作用における適応的意義について総合的に理解する
ことを目指します。
主催:千葉大学・教育研究高度化のための支援体制整備事業
「人間理解のための認知適応科学の創成」プロジェクト(代表:伝康晴)
日時:2011年2月6日(日)14:00 ~ 18:00
場所:千葉大学 人文社会科学研究科棟2階 マルチメディア会議室
スケジュール:
14:00 ~ 14:05 開催の挨拶 <牛谷智一 千葉大学文学部>
14:05 ~ 14:55「注意操作とターゲット検出における視聴覚様相の特性」<一川
誠 千葉大学文学部>
14:55 ~ 15:45「視覚学習による脳神経機構の最適化:脳機能イメージングによ
る検討」<四本裕子 慶応義塾大学社会学研究科>
15:55 ~ 16:45「サルにおける表情や音声に対する生体応答」<倉岡康治 京都
大学霊長類研究所>
16:45 ~ 17:35「表情と音声による情動表現の多感覚知覚」<田中章浩 早稲田
大学高等研究所>
17:35 ~ 総合討論
司会:牛谷智一
会場アクセス:http://www.chiba-u.ac.jp/access/
※キャンパス地図の文学部の3番建物の西隣,大学会館のすぐ北隣の建物です。
※キャンパスは,JR総武線西千葉駅からすぐです。
アブストラクト(講演順):
「注意操作とターゲット検出における視聴覚様相の特性」
<一川誠 千葉大学文学部>
視覚と聴覚において,異なる知覚様相の刺激提示が標的刺激の検出に及ぼす効
果について検討した実験結果について紹介する。先行刺激によって視覚や聴覚に
おける注意を刺激駆動的もしくは意識駆動的に誘導した場合,先行刺激の有効性
に対応して標的刺激検出が促進されたのは視覚標的のみで,聴覚的標的の検出の
促進は警告的効果にもとづくものであることが示唆された。他方,複数の環境音
の混合からの標的音検出課題では,映像や文字などの視覚刺激提示が対応した音
の検出を高めるだけではなく,他の音刺激検出を抑制する効果を持つことが示さ
れた。これらの実験結果より,視覚と聴覚における注意操作や様相間交互作用の
特性について議論する。
「視覚学習による脳神経機構の最適化:脳機能イメージングによる検討」
<四本裕子 慶応義塾大学社会学研究科>
同一の刺激や課題の繰り返しにより,感度や課題成績が向上することを,知覚
学習という。知覚学習による感度の向上は,閾値下の刺激でも報告されているこ
とから,多くの知覚学習課題で,注意とは独立なボトムアップの神経機構の関与
が示唆されている。本ワークショップでは,局所的な低次の神経機構の関与が示
唆されている視覚課題を用い,(1) 視覚情報が運動制御に干渉する際,より弱い
視覚情報が,より強い干渉を生じさせること,また,(2) 視覚情報を抑制する視
覚学習において,抑制すべき情報に対する "Awareness" が,視覚学習の成立や
脳活動の賦活の変化に影響を及ぼすことを報告し,低次の視覚情報処理におけ
る, "Awareness" の役割を議論する。
「サルにおける表情や音声に対する生体応答」
<倉岡康治 京都大学霊長類研究所>
ヒトと近縁なアカゲザルは,コミュニケーションにおいて表情や音声といった
複数の感覚チャネルを用いる。本発表ではアカゲザルが種特異的な表情を見たり
音声を聞いたりする際の生体応答に関する研究について議論したい。サルは視聴
覚同時入力があるときに単一感覚入力の時より大きな自律神経応答を示した。こ
れは複数感覚入力により,より強い情動が生起したと考えられる。さらに扁桃体
ニューロンの多くは視覚応答性のみを示したにも関わらず,視聴覚同時入力があ
るとより大きな応答を示した。このような複数感覚統合に伴う応答様式を示す領
域はサルの脳全体に広く存在することが分かってきており,霊長類の脳は複数感
覚様相に属する情報処理にうまく対応できるように進化してきたと考えられる。
「表情と音声による情動表現の多感覚知覚」
<田中章浩 早稲田大学高等研究所>
人間同士のコミュニケーションにおいて,話し手は言語内容に加えて,表情,
身振り,声のトーンなど,ありとあらゆる非言語情報も含めて情動を表現してい
る。こうした多感覚的な情動表現の認知様式には文化差がある可能性を指摘でき
る。そこで,話し手の表情と音声が表現する情動を独立に操作したときに,聞き
手は相手の情動をどのように認知するのかを日本人とオランダ人の間で比較し
た。実験の結果,日本人は表情判断時には音声からの影響が大きく,音声判断時
には表情からの影響は小さかった。つまり,一貫して日本人はオランダ人よりも
声への依存性が高かった。この結果は,人間が特定の文化・言語的環境のなかで
成育する過程で,多感覚情報に対する注意バイアスを適応的に変化させているこ
とを示唆する。
多感覚認知における適応
知覚認知過程の諸特性は,環境における適応を通して獲得されてきたものと考
えられます。中でも,多感覚間での情報統合の過程や相互作用の様式は,環境の
要因に対応して変化する可塑性を持つことが多くの研究によって示唆されていま
す。このたび,実験心理学や脳機能イメージング,認知神経科学といった行動科
学の異なる方法論での最新の研究成果をもとに,多感覚間の統合・相互作用とそ
の適応について討論する機会を設けました。本ワークショップでの議論を通し
て,異なる感覚様相間の相互作用における適応的意義について総合的に理解する
ことを目指します。
主催:千葉大学・教育研究高度化のための支援体制整備事業
「人間理解のための認知適応科学の創成」プロジェクト(代表:伝康晴)
日時:2011年2月6日(日)14:00 ~ 18:00
場所:千葉大学 人文社会科学研究科棟2階 マルチメディア会議室
スケジュール:
14:00 ~ 14:05 開催の挨拶 <牛谷智一 千葉大学文学部>
14:05 ~ 14:55「注意操作とターゲット検出における視聴覚様相の特性」<一川
誠 千葉大学文学部>
14:55 ~ 15:45「視覚学習による脳神経機構の最適化:脳機能イメージングによ
る検討」<四本裕子 慶応義塾大学社会学研究科>
15:55 ~ 16:45「サルにおける表情や音声に対する生体応答」<倉岡康治 京都
大学霊長類研究所>
16:45 ~ 17:35「表情と音声による情動表現の多感覚知覚」<田中章浩 早稲田
大学高等研究所>
17:35 ~ 総合討論
司会:牛谷智一
会場アクセス:http://www.chiba-u.ac.jp/access/
※キャンパス地図の文学部の3番建物の西隣,大学会館のすぐ北隣の建物です。
※キャンパスは,JR総武線西千葉駅からすぐです。
アブストラクト(講演順):
「注意操作とターゲット検出における視聴覚様相の特性」
<一川誠 千葉大学文学部>
視覚と聴覚において,異なる知覚様相の刺激提示が標的刺激の検出に及ぼす効
果について検討した実験結果について紹介する。先行刺激によって視覚や聴覚に
おける注意を刺激駆動的もしくは意識駆動的に誘導した場合,先行刺激の有効性
に対応して標的刺激検出が促進されたのは視覚標的のみで,聴覚的標的の検出の
促進は警告的効果にもとづくものであることが示唆された。他方,複数の環境音
の混合からの標的音検出課題では,映像や文字などの視覚刺激提示が対応した音
の検出を高めるだけではなく,他の音刺激検出を抑制する効果を持つことが示さ
れた。これらの実験結果より,視覚と聴覚における注意操作や様相間交互作用の
特性について議論する。
「視覚学習による脳神経機構の最適化:脳機能イメージングによる検討」
<四本裕子 慶応義塾大学社会学研究科>
同一の刺激や課題の繰り返しにより,感度や課題成績が向上することを,知覚
学習という。知覚学習による感度の向上は,閾値下の刺激でも報告されているこ
とから,多くの知覚学習課題で,注意とは独立なボトムアップの神経機構の関与
が示唆されている。本ワークショップでは,局所的な低次の神経機構の関与が示
唆されている視覚課題を用い,(1) 視覚情報が運動制御に干渉する際,より弱い
視覚情報が,より強い干渉を生じさせること,また,(2) 視覚情報を抑制する視
覚学習において,抑制すべき情報に対する "Awareness" が,視覚学習の成立や
脳活動の賦活の変化に影響を及ぼすことを報告し,低次の視覚情報処理におけ
る, "Awareness" の役割を議論する。
「サルにおける表情や音声に対する生体応答」
<倉岡康治 京都大学霊長類研究所>
ヒトと近縁なアカゲザルは,コミュニケーションにおいて表情や音声といった
複数の感覚チャネルを用いる。本発表ではアカゲザルが種特異的な表情を見たり
音声を聞いたりする際の生体応答に関する研究について議論したい。サルは視聴
覚同時入力があるときに単一感覚入力の時より大きな自律神経応答を示した。こ
れは複数感覚入力により,より強い情動が生起したと考えられる。さらに扁桃体
ニューロンの多くは視覚応答性のみを示したにも関わらず,視聴覚同時入力があ
るとより大きな応答を示した。このような複数感覚統合に伴う応答様式を示す領
域はサルの脳全体に広く存在することが分かってきており,霊長類の脳は複数感
覚様相に属する情報処理にうまく対応できるように進化してきたと考えられる。
「表情と音声による情動表現の多感覚知覚」
<田中章浩 早稲田大学高等研究所>
人間同士のコミュニケーションにおいて,話し手は言語内容に加えて,表情,
身振り,声のトーンなど,ありとあらゆる非言語情報も含めて情動を表現してい
る。こうした多感覚的な情動表現の認知様式には文化差がある可能性を指摘でき
る。そこで,話し手の表情と音声が表現する情動を独立に操作したときに,聞き
手は相手の情動をどのように認知するのかを日本人とオランダ人の間で比較し
た。実験の結果,日本人は表情判断時には音声からの影響が大きく,音声判断時
には表情からの影響は小さかった。つまり,一貫して日本人はオランダ人よりも
声への依存性が高かった。この結果は,人間が特定の文化・言語的環境のなかで
成育する過程で,多感覚情報に対する注意バイアスを適応的に変化させているこ
とを示唆する。
